「松原全体まではいかないはずだが、数メートルの範囲で被害がある」
それによると、ツチクラゲは、キノコの一種(カビの仲間)で、普段は胞子の状態で土の中でじっとしている。山火事などで土の温度が上がると、競合する菌類が減ったり死滅したりすると同時に、高温が引き金となってツチクラゲの胞子が発芽して活動を始めると言われている。
「焚き火や山火事をきっかけに、ツチクラゲが発生しやすいのは事実です。マツの木などに病気を引き起こす能力があり、数年にわたって火が出たエリアの外側の木を枯らします。エリアの端から徐々に数メートルの範囲に被害が広がり、5メートルに達することもあります」
また、ツチクラゲの被害でマツの木などが弱ると、マツ枯れ(マツ材線虫病)の病原であるマツノザイセンチュウを媒介するマツノマダラカミキリが衰弱木に産卵する可能性があるという。
「ただ、ツチクラゲ病は全国的なまん延が問題になっている『マツ枯れ』のように、大規模な被害を引き起こし深刻な状態になることはないと考えられます。小さな焚き火なら被害がそれほど大きくならず、ヘクタール規模で松原が枯れることは、たぶんないでしょう。大きな山火事の後ではそれなりに被害が大きいですが、焚き火なら、大きな被害になることはなく、ほとんど大きな問題になることはないと思います」
とはいえ、海岸の松原では、ツチクラゲが発生するため、焚き火は厳禁だと自治体が看板を立てたケースもあったとした。
「松原の一部が枯れると、景観的に見栄えが悪くなってしまいます。また、マツが枯れますと、林業に被害が出ることもあります。焚き火を禁止するかは、自治体の判断によると思います。ツチクラゲの生態については、まだ分かっていないことの方が多く、科学的根拠に基づいた防除法がないのが現状だと思います」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)