電子辞書よりも「紙の辞書のほうが売り上げが大きい」
2社の回答に共通するのは、デジタルサービスの拡大が書籍版の辞書の売り上げに影響していると答えた点だ。では、電子辞書による売り上げはどうなっているのか。
小学館によれば、電子辞書(専用機・WEB)は、辞書データを提供する各社で、独自の収益モデルを構築して利用者に辞書情報を提供しているという。提供各社ごとの契約は様々で一律に語ることはできず、書籍との比較もできないとするも、「デジタル化辞書の売上(版権使用料)を全体で見た場合でも、最も売れた当時の書籍版の売上にまだまだ届いていないのが現状です」と説明した。
三省堂も「紙の辞書のほうが売り上げが大きい」と答えている。電子辞書は2007年ごろをピークに売り上げが縮小する一方で、アプリ辞書の売り上げは伸びるなど、媒体による差があるという。
こうした漢和辞典の現状に、2社の辞典編集部はどのような見解を抱いているのか。また、今後どのような取り組みを行う予定なのか。
小学館は、「日本語が漢字なしには成立しない以上、その漢字や元となる漢文を知るため、漢和辞典の役割は終わりません」と見解を示した。手書きで漢字を書く際の「字引」の需要が減ったことで、書籍版の辞典が売れなくなったとしつつも、「実際には、デジタル環境での読み書きは増加の一途で、漢字を使う人は増えていると言えます」と続けた。既存の辞典をデジタルデータ化する取り組みを積極的に進めているという。
三省堂は、辞書出版の状況が変わる中でも「読者に必要とされる辞書を刊行し続けることにつきるであろうと考えております」と回答。費用がかかる純新刊の辞書の企画開発は容易ではないとするも、(1)改訂というかたちで各々の辞書を高めていく(2)デジタル化に対応してより多くの読者に利用してもらうこと――に取り組んでいるとした。