JR九州の古宮洋二社長が2022年9月9日、東京・内幸町の日本記者クラブで開いた記者会見で、23年夏にBRT(バス高速輸送システム)に転換する日田彦山線(添田-日田)の取り組みについて紹介した。
日田彦山線は17年7月の九州北部豪雨で添田(福岡県添田町)-夜明(大分県日田市)間が被災し、不通が続いてきた。被災前から利用者減少が続いたこともあり、鉄道での復旧を断念し、BRTでの復旧が決まった経緯がある。ローカル線の存続について問われた古宮氏は、普段は自動車しか利用しない沿線住民が鉄道の存続を求める矛盾を指摘しながら「真剣に我々は地元と議論しなければいけない」「いろいろ道があるのではないか」。日田彦山線のBRTについて「うまく成功させて、これを新しい、今後のひとつのローカル線の形にもなり得るのかな、ということをチャレンジしたい」などと話し、日田彦山線のあり方が他のローカル線のモデルになり得るとの見方を示した。
輸送密度131人、乗客の6~7割が通学する高校生
日田彦山線の被災区間では、沿線人口は1987年のJR発足から2割減少したのに対して、利用者は8割減。採算面でも厳しい状況が続いてきた。1キロメートルあたりの1日の利用人数を示す「輸送密度」(平均通過人員)は131人(16年)で、その6~7割が通学に利用する高校生だという。
そんな中での被災で、復旧費は70億円を超えると試算された。JR九州は17年11月に同社単独での鉄道復旧は困難だと判断。周辺自治体を交えた「復旧会議」が開かれ、20年7月にBRTで復旧することが決まった。鉄道時代よりも駅(停留所)の数が増えるほか、「鉄道時代よりも朝夕について本数を増やしていきたい」(古宮氏)としている。
22年7月に国交省の有識者会議がまとめた提言では、「1000人未満」の路線について、国が協議会を設置して沿線自治体や鉄道事業者と存廃を含めた議論を進めるように求めている。JR九州は輸送密度が2000人未満の区間を毎年公表している。21年度は、1000人未満が10路線13線区にのぼった。
「鉄道、ずっと頑張ってくれよな。でも俺たち、実際、日頃乗る機会全然ないもんな」
ローカル線を「どこまで維持していくかという覚悟」を問われると、古宮氏は、沿線住民や自治体と議論が必要だとの考えを示した。日田彦山の状況を繰り返しながら、「高校生の日頃の足ではありますけど、大人にとっては、皆さん車なんですよ、九州はみんな車です」。「1人1台」が日常になっている地域で、「自分のところのローカル線はどうするのかというのは、真剣に我々は地元と議論しなければいけないと思っています」とした。
その上で次のように話し、沿線住民が乗る機会が「全然ない」一方で、鉄道は「あった方がいい」とする声の落とし所を探る必要があるとした。
「そうしないと、地元も本当に『国鉄からJRになってもそこは全部、いくら利用しなくても、いや、やってくれるんだ』というふうなことを皆さん思っています。実際にいろいろなエリアに行って話しましたが、『鉄道、ずっと頑張ってくれよな。でも俺たち、実際、日頃乗る機会全然ないもんな。これ、わがままですよね?』という方々が、地元にたくさんいらっしゃるんですね。『でも、あった方がいい』。そこをどういうふうな折り合いをつけるかということは、今後地元と話していきたいな、というふうに思っています。いろんな道があるじゃないかなというふうに、私は思います」
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)