円安で困った人に税収増を使えないことが問題
円安が日本経済にプラスという数字はでている。財務省が発表した2021年度の法人企業統計で、全産業(金融・保険業を除く)の経常利益が前年度比33.5%増の83兆9247億円と過去最大となった。その統計では、2022年4-6月の分も公表され、全産業の営業利益は前年同期比13.1%増の17兆6716億円、経常利益は前年同期比17.6%増の28兆3181億円。経常利益は製造業、非製造業のそれぞれでも過去最高である。
営業利益が伸びているのは、新型コロナウイルス禍からの経済・社会活動の正常化で業績回復が進んだからだ。
経常利益が営業利益より伸びているのは、非営業利益の投資収益が伸びているからだ。例えば、受取利息等は7兆3573億円で過去最高だった。
その主因は円安による海外投資収益の増加である。円安効果は輸出拡大という形でも現れるが、過去の海外投資収益という形でも表れる。
一般に現地生産に移行していると輸出増にならないので、円安効果は限定的と言われるが、現地生産なら海外投資を既に実施しているはずで、その場合には輸出増でなく海外投資収益増に替わっているはずだ。今回の法人企業統計では、その効果が強く表れている。
円安はGDP増加、税収増加要因なので問題ではなく、円安で困った人に税収増を使えないことが問題だ。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。21年に辞職。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。