AIイラスト生成サービス「mimic(ミミック)」を運営するラディウス・ファイブ(東京都新宿区)が2022年8月30日、不正利用を防ぐ仕組みが不十分であるとして、全機能を停止すると発表した。
mimicベータ版のトップページを除く全機能の停止
mimicは、クリエイティブやエンタメに関連するAIの開発などを行うラディウス・ファイブがリリースしたAIイラスト生成サービスだ。最小15枚から最大100枚までのキャラクターイラストをアップロードすると、AIがそれらの特徴を学習し、一定時間(数時間以上)経過後に「そのクリエイター風の独自の新しいイラスト」を生成する。
サービスのベータ版は8月29日に公開され、公式が同日ツイッター上でリリースを報告して話題になったが、SNS上では他人の絵を無断利用して生成された絵が悪用されるのではないかといった指摘の声が相次いでいた。
公式サイトのガイドラインによれば、禁止事項の項目で「他人のイラストを勝手にアップロードしないでください。必ずあなたが描いたイラスト、もしくは権利を保有しているイラストをアップロードしてください」と書かれており、権利侵害を発見した場合にはアカウントの停止や捜査機関への情報提供などの「然るべき措置を講じます」としている。だが、サービス利用者が自身で描いた絵かどうかを判別する方法などについては明記されていない。
上記の指摘を含めた多数の意見を受けて、運営は30日、(1)mimicベータ版のトップページを除く全機能の停止(2)お問い合わせフォーム、公式Discordの閉鎖(3)作成済みのイラストメーカー、作成中のイラストメーカーの削除(4)イラストメーカーに関連する全ての画像をサービスから削除(5)不正利用に関わる課題を改善できた場合、mimic正式版をリリースする予定――という5つの対応を発表した。
同社は、利用者が著作権を保持していないイラストを、著作権者の許諾なくアップロードすることを「不正利用」だとした上で、「mimicベータ版では不正利用を防ぐ仕組みが不十分であると考えたため、一度作成中を含む全てのイラストメーカーを削除し、全機能の停止を行います」と報告。「不正対策を改善できた場合に正式版をリリースいたします」とした。
「不正利用を含め様々な課題を改善する必要があると考えております」
「不正利用」に関する意見については、ベータ版は「利用規約およびガイドラインにて、当該行為は禁止行為としております。利用規約違反と判断した場合は、アカウントの停止や悪質なものは法的措置捜査機関への情報提供を行う場合があります」と同社は回答し、「不正対策の見直しとサービス仕様の改善を進めて参ります」としている。
「生成されたイラストの権利」に関する意見についても、「アップロードしたイラストを描いたクリエイターもしくはイラストの権利者に帰属しています(利用規約第12条2項)。また、公開設定されているイラスト(AI出力物)に関しては、弊社のSNSでのシェアやメディアでの掲載を想定し、マーケティングで利用できる旨を定めさせていただいております(利用規約・第12条3項)」と回答し、「公開することで作成したイラスト(AI出力物)の知的財産権が弊社に移転するものではございません」とした。
同社は「mimicは、日々忙しい中で創作活動をされているクリエイターの時間をより有効的に活用いただけないかと考え、開発したサービス」だと説明し、(1)クリエイター自身の「イラスト制作の参考資料」(2)クリエイターの「SNS・ファンコミュニティの活性化」―― といった「クリエイターの活動のサポート」を想定したサービスだと述べている。
今回のリリースに対する意見について「結果として想定を遥かに超える数のご意見を頂戴いたしました。今後のサービス展開に際して、不正利用を含め様々な課題を改善する必要があると考えております」とした上で、「ご意見を真摯に受け止め、クリエイターの方々が安心して利用できるサービスとなるよう、正式版リリースに向けて改善を進めて参ります」としている。