譲渡・転売なら...賠償額増える可能性も
没収した私物を教員が返さないことに、問題はないのか。J-CASTニュースは22年8月26日、弁護士法人ユア・エースの正木絢生代表弁護士に話を聞いた。
正木弁護士はまず、教員が生徒の私物を没収すること自体は「学校教育法11条により認められる適法な行為だと思われます」と指摘する。学校教育法11条には「校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる」とある。
その一方で、教員や学校側が没収した私物を返却しないことは「生徒の所有権を侵害したものとして、刑事上窃盗罪が成立する可能性や、民事上損害賠償請求を受ける可能性があります」と指摘する。仮に、教員が生徒の私物を「私物化」していたり、他者への譲渡や転売を行っていたりした場合は「単に返却しない場合と比べ、所有権侵害の程度が著しくなる」ことから、法的問題に発展する可能性が高いという。
特に譲渡や転売など、私物が自身の占有を離れているケースでは「所有権に基づく返還請求を受けた場合に返却できる可能性が下がる」とし、「賠償請求された場合に物の価値相当額まで支払わなければならない危険があります」と指摘した。
もし、元生徒が学校や教員に対し私物の返却を求めた場合は「所有権に基づく返還請求権の行使と考えられるため、返却しなければなりません」とする。
一方で、元生徒が返却を求めない場合は「元生徒が権利を行使していないと考えられるため、返却しなくともよいと考えられます」。それでも、私物を返却しないまま、後日損害賠償請求を求められた場合には、支払わなければならない利息が増える危険もあるとして、「道義上は返却すべき」とした。