漁港の釣り人に「竿引っ張られた」と言われてにらまれたと、漁船の船長がツイッターで明かし、「竿を上げるのが釣り人のルール」だと訴えている。
漁港は、基本的に漁業以外は許可されておらず、釣りをするなら配慮が求められている。釣りの関係者からも、「漁港は漁師さんの仕事場」だとして、マナーを守るべきだとの声が上がっている。
「竿を上げるのが釣り人のルール」「キレられても困ります!」
ツイッターで訴えたのは、秋田県にかほ市内で底引き網漁船「隆栄丸」を操業している佐藤栄治郎船長(28)(えっこ@Ryueimaru1)だ。
「拡散希望」として、2022年8月21日に金浦(このうら)漁港に入港する際に起きたトラブルについて投稿した。
投稿や佐藤船長の話によると、この日昼ごろ、漁港の岸壁で釣りをしていた40代ぐらいの女性が、港に停泊した船まで車で追いかけて来て、いきなり「竿引っ張られたんですけど」と激怒した。何のことか分からず話を聞くと、女性は夫婦で釣りに来て、仕掛けが船に引っかかって竿ごと引っ張られたという。
佐藤船長は、そんなことは知らないし、竿も見当たらないと説明すると、ぶつぶつ文句を言いながら、船の周辺を探した。佐藤船長が帰ろうとすると、最後にはにらまれたという。
これに対し、佐藤船長はツイッターで、「港で釣りをするなら船が来たら仕掛けを回収して竿を上げるのが釣り人のルールだと思います」と指摘し、「キレられても困ります!」と釣り人に苦言を呈した。
この投稿は、5万件以上の「いいね」が付いており、「船が優先は当たり前のルールだ」「始めたてでルールとか知らない人だったのかな...」といった声が寄せられている。
むしろ、釣り糸がスクリューに絡まったりエンジンに吸い込まれたりして、船が壊れていないかと心配する声が出ていた。
漁協「マナーを知らない人が時々おり、たまに警察が出動」
隆栄丸の佐藤船長は8月25日、J-CASTニュースの取材に対し、大雨の影響で海が濁っているため、潜ってスクリューの確認はできていないとしたうえで、修理する必要が出てきた場合は、100万円単位で費用がかかることを明らかにした。
金浦漁港は、秋田県の県有地になっており、県から管理を委託されている県漁協南部支所では同日、取材にこう話した。
「漁港は、漁業のために整備されており、漁業以外は許可されていません。釣りについては、漁業に損害を受けていないなら、目くじらを立てることはないと、大目に見られています。テトラポット前など一部で柵をしていますが、釣り禁止との立て看板などは立てていません」
漁港の岸壁からは、メバルやヒラメなどの沿岸魚が釣れるといい、それを狙って週末を中心に釣り人が集まってくるという。
「今回の方は、投げ釣りで底魚を狙っていて、漁船の航路に糸がかかっていたため、置き竿で目を離したすきに持っていかれたのではないかと思います。マナーを知らない人が時々おり、立ち入り禁止場所に入ったりして、たまに警察が出動することがあります。しかし、竿を持っていかれたと騒ぐことは、珍しいと思いますね。自らの不注意ですから、普通の人なら抗議しないであきらめるでしょう。今回の方が謝罪に来たということは聞いていません」
漁港でのトラブルが24日に一部ネットニュースでも取り上げられると、ツイッターでは、釣りの関係者からの投稿が相次いだ。
つり人社、「#マナーも腕のうち」とツイッターで注意喚起
月刊つり人やバスフィッシング専門誌Basserを出している「つり人社」は8月24日、「漁港は漁師さんの仕事場です」として、「釣り人の迷惑行為で釣りが禁止されるケースも多くあります。迷惑行為は絶対にやめましょう」と投稿で訴えた。「#マナーも腕のうち」とハッシュタグをつけてマナー啓蒙動画も添え、釣り人に注意喚起している。
仙台市内の釣具店「THE STRIKE skate and tackle shop」は、「釣り人ブチ切れ というか逆ギレで漁師さんにご迷惑を掛けた話がトレンド入りというなんとも恥ずかしい話」「思いやりのない一部の釣り人が大切な遊びを傷つけているのが許せない」とつづり、「多くの釣り人はマナーを守り、周りに気を使って釣りしている事は釣具屋としてお伝えしたい」と訴えた。
釣りを題材にした「放課後ていぼう日誌」で知られる漫画家の小坂泰之さんは、「漁港は漁協関係者の方々の仕事をする場所ですので、釣り人の皆さんには漁師さんらの邪魔にならないよう最低限のマナーを守って釣りを楽しんで欲しいです」と呼びかけた。マナーについての漫画のシーンも投稿し、「船が前を通る時は投げない 仕掛けを出してたら巻いて回収する」「船に糸が絡まったり仕事してる漁師さんの邪魔にならないようにね」といったやり取りを紹介していた。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)