識者に聞く施設トイレの課題と現状
交換台などの設置に前向きな姿勢を見せた運営会社。タナイさんは8月9日、取材に「利用者としても安心しました」と語る。自身も設備投資に関わる仕事を経験し、設備更新の大変さは「よくわかる」という。今後は「ホームページで各店舗の男女別の設備状況を記載する等の暫定策を検討いただけたら嬉しい」とした。
近年、公共・商業施設の男性トイレにおむつ交換台の設置を求める動きが相次いでいる。17年にはお笑いコンビ「飛石連休」の藤井ペイジさんが、東京都庁の男性用トイレにおむつ交換台が設置されておらず「リアルに困る」とツイートし、注目を集めた。19年には、「#俺のおむつ交換台」というハッシュタグとともに、大手家電量販店の男性トイレにおむつ交換台の設置を求める「change.org」の署名活動が話題を呼び、最終的には1万7551人の賛同を集めた。
公共・商業施設のトイレにおけるおむつ交換台の現状はどうなっているのか。一般社団法人日本トイレ協会の運営委員で、元東洋大学ライフデザイン学部教授の川内美彦氏が7月28日、J-CASTニュースの取材に応じた。
川内氏によると、公共施設などのバリアフリー化を推進する「バリアフリー法」に基づくトイレ内へのおむつ交換台の設置義務はないものの、従来は広いスペースを備え、男女問わず利用できる多機能トイレへの設置が勧められてきた。一方、多機能トイレは高齢者や障害がある人も使うことから、利用者の集中が問題に。このため、近年は男女のトイレに分散して交換台を設置することが推進されているという。
ただ、川内氏は「個人的な意見」だとしつつ、男女トイレへの交換台の分散設置にも課題があるとの見解を示す。
「男女別に設けることは望ましいことにみえますが、一方でファミリーでの利用はできなくなります。男女トイレ内のブースはベビーカーも入るように考えると広くなりますから、トイレ面積が増加します。そのため、面積に余裕のある大型施設でないと導入しにくくなります。またトイレ改修の工事も必要になります。そして、男女の一般ブースに並びますから、他のお客も利用します」
川内氏は「機能分散で増える面積を全部集めると、多機能トイレが1または2室追加できる」とし、「男女トイレ内におむつ替えスペースを設けるならば、最初からおむつ替えスペースを備えた多機能トイレを増やした方がいい」との持論を示す。
育児・介護休業法の改正に伴い、10月1日からは男性が従来の育休と比べて柔軟に休業を取得できる「産後パパ育休」がはじまる。男性がより育児に積極的になることが見込まれる中、ハード面での整備も課題となりそうだ。
(J-CASTニュース記者 佐藤庄之介)