2022年春から水際対策の緩和が進むが、訪日客の回復が進まない。日本政府観光局(JNTO)は2022年8月17日、7月の訪日外国人客数(推計値)は14万4500人で、4か月連続で10万人を上回ったと発表した。21年7月の5万1055人と比べると「2.8倍に増えた」とも言えるが、「コロナ前」の19年7月は299万1189人。当時と比べると「95.2%減」だ。当時は訪日外国人の大半を観光客が占めており、その観光客がほとんど戻ってきていないのが原因だ。
6月には観光客の受け入れも再開されたが、添乗員つきのツアー客限定だ。「コロナ前」に日本を訪れていた人のうち大半を占めていた個人旅行客は未解禁で、これがボトルネックになっている。
訪日客の9割が観光客、そのうち8割が個人旅行だった
政府は22年2月まで1日あたりの入国者数の上限を3500人に設定していたが、3月1日に5000人、3月14日に7000人、4月10日に1万人、6月1日に2万人と段階的に引き上げた。6月10日から観光客の受け入れも再開した。
ただ、訪日客数は必ずしも右肩上がりというわけではなく、4月は13万9548人、5月が14万7046人、6月(推計値)は12万0400人といった具合だ。
JNTOの統計とは別に、出入国在留管理庁は22年6月分から、観光目的で入国した人の数を公表している。6月が252人、7月が7903人だ。現時点では観光客の割合はきわめて小さく、大半がビジネス客だとみられる。JNTOの統計によると、19年7月の訪日客299万1189人のうち、観光客が271万3329人と90.7%を占めていた。当時の状況とは対照的だ。
旅行・航空会社関係者がそろって指摘するハードルが、(1)ビザの取得が必要(2)日本に向けて出発する際にPCR検査の陰性証明も必要(3)個人旅行が解禁されていない、の3つだ。特に大きいのが(3)だ。観光庁の19年の「訪日外国人消費動向調査」では、日本を訪れた人がどのように旅行を手配したかを調べている。それによると、団体ツアーが16.9%、航空券とホテルがセットになった「個人旅行パッケージ」が6.5%、航空券やホテルを別々に手配する「個別手配」が76.6%だった。
団体ツアー客の割合が高いのは...
国・地域別に見ると、団体ツアーの割合が最も高かったのは中国で27.1%。ベトナムの26.5%、台湾の25.4%、タイの19.8と続いた。米国や欧米諸国、東南アジアでもシンガポールやインドネシアは10%未満。つまり、現時点では東アジアや東南アジアを中心とする2割程度の観光客にしか、門戸が開かれていないということになる。
日本経済団体連合会(経団連)など9団体は6月10日、日本政府に対して「G7諸国並み」に水際対策緩和を求める声明を出している。具体的内容として、「個人の訪日観光客受入れの早期再開」「出国前検査において、より負担の少ない検査方法の利用やさまざまな形式の検査証明書での結果の提出を有効な要件として認める」「すべての国・地域からの帰国者・入国者について、検疫所による入国時検査を撤廃」など5項目を挙げている。
なお、22年7月に出国した日本人は27万7900人(推計値)。19年7月の165万9166人よりも83.3%少ない水準にとどまっているが、外客数よりは戻りのペースは早い。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)