一般社団法人「日本子育て支援協会」が主催する日本子育て支援大賞をめぐり、明石市長の泉房穂氏は2022年8月15日、受賞の条件に金銭を要求されたとツイッターに投稿した。3年間のロゴ使用料とトロフィー代に合計80万円がかかると説明されたとしている。
一方で日本子育て支援協会の吉田勝彦理事長は16日、取材に対し「受賞の条件に有償はありません」などと説明する。
協会は「受賞のみは無償」と説明
日本子育て支援大賞は、子育てに携わる父母や祖父母が実際に「役立った価値」を評するとしている。7月21日にはオリエンタルホテル東京ベイ(千葉県浦安市)で表彰式が開催され、4つの自治体と33社の商品が表彰された。
明石市の泉市長は8月15日、大賞への推薦を受けていたが辞退したとツイッターで述べた。理由については「大賞受賞の条件として、金銭を要求されたからだ」という。
日本子育て支援協会の吉田理事長は16日、取材に対し次のように説明する。
「受賞には無償と有償がございます。受賞のみは無償で、トロフィーとロゴマーク使用は有償となります。受賞の条件に有償はありません。つまりロゴ使用料やトロフィー代は受賞条件になっていません。
現実に今回4自治体が受賞されましたが、今回は4自治体ともロゴマークは使われず無償でした。(ただしトロフィーは2自治体で申し込みがありこれは有償です。)」
吉田理事長によれば、賞には自薦と他薦があり、明石市は他薦で一次推薦を受けていたという。しかし応募書類の提出がなかったため、その後の審査は行っていないとのことだ。
明石市長「お金を払わなくてよければという条件であればお受けいたします」
泉市長は16日、取材に対し事の経緯を次のように説明する。
3月8日、明石市役所にミキハウス子育て総研(東京都港区)から大賞に推薦したいというメールが寄せられた。
「なんでミキハウス子育て総研から連絡が来たのかと聞いたら『うちが全部やっています』と言っていました。文書を見ると『一般社団法人日本子育て支援協会より弊社が委託を受けている事業』と書いています」
当初は市役所の担当者がやり取りを行っていたが、受賞には金銭が必要だと市長に報告が寄せられた。泉市長は「自治体の表彰が有償というのは聞いたことがない。何かの手違いではないか」と驚き、ミキハウス子育て総研の担当者に確認の電話をしたという。
「電話をしたら、トロフィー代が10万円、ロゴマーク使用料が3年間で70万円。合計80万円かかると伝えられたので、自治体としては表彰を受けることは名誉なことで嬉しいけども、税金からお金を払うのはしんどいですとお話ししました。
それはどこの自治体も払わないでしょうと尋ねたら、先方が他の自治体は払ってますと言われたので驚き、明石市としては受賞を辞退する理由はないけれども、お金を払うのはご勘弁くださいと。表彰式に出席などはさせていただきますが、それ以上のことは無理です。お金を払わなくてよければという条件であればお受けいたしますと言って電話を切ったというのが経緯です」
泉市長は日本子育て支援協会とは直接やりとりしていないと話した。
「明石市だけに金銭的要求と言うのは認識の齟齬だと思われます」
また泉市長はツイッターで、ミキハウス子育て総研が「日本子育て支援大賞」の委託を受けながら、ミキハウスの商品が受賞していると言及した。
取材に対し、ミキハウス子育て総研は17日、賞を授与する権限などは持ち合わせていないと述べる。また「日本子育て支援大賞」は同社の委託事業ではないと説明する。
「日本子育て支援協会からノミネートされた企業や自治体とやり取りをする窓口をさせていただいております。エントリーした自治体の審査、選考が進む中で書類の不備や追加の資料を求める時に、協会の指示の下で私どもが取り寄せなどを行っております」
日本子育て支援協会の担当者も、ミキハウス子育て総研について「事務局ではなく推薦の一覧の作成をお願いしております」と説明した。
日本子育て支援協会とミキハウス子育て総研は、同社が明石市に対し、他の自治体と同様に協会の依頼で連絡したことを認めている。
日本子育て支援協会の吉田理事は、泉市長の金銭を要求されたという説明について、次のように受け止めている。
「他の自治体は2市2町とも無償で受賞されていますので、明石市だけに金銭的要求と言うのは認識の齟齬だと思われます。もちろん、今後はこのようなことがないように更に丁寧にご説明してまいります」
ロゴマーク使用料やトロフィー贈呈で得た利益は
またSNSでロゴマークやトロフィーを押し売りしているのではないかと言った疑問が寄せられたことについては、「ロゴを使っていただいて子育て支援商品やサービスの認識や意識が高まり、そのような商品・サービスが広がっていくことは望んでいますが、押し売りをする気は毛頭ありませんので誤解があれば説明時の修正が必要かと思います」と述べた。
ロゴマーク使用料やトロフィー代で発生した利益は、次のように用いるという。
「本協会は国や地方自治体、私企業等どこからも一切の支援をいただいておりません。従いまして当協会の運営費はロゴマークやトロフィー代の利益を活用しております。 受賞式典(ホテルの受賞式のための部屋の賃料、看板、受賞者の皆様のお茶代等)や表彰状と入れる筒等並びに日経MJ等に日本子育て支援大賞受賞の告知を行っており、すべての受賞者様つまり無償で受賞された方たちの分も申し訳ありませんが、ロゴを有償で使っていただいた方たちからいただいた費用ですべてを賄っています」
受賞の条件として「ロゴ使用料70万円」と「トロフィー代10万円」が必要と言われたので、ロゴは使わないし、トロフィーもいらないので、賞だけというわけにはいかないのかと、主催者に直接問合せをしたが、他の自治体には払ってもらっているので、とのことだった。
— 明石市長 泉 房穂(いずみ ふさほ) (@izumi_akashi) August 15, 2022
関係者の皆さん、見直しの検討を! https://t.co/RetMt5mMX5 pic.twitter.com/bl9MDnhBKl