撮影のために電車内のライトを消してほしいと、車内の通報装置の赤いボタンを押した男性がいたとして、ツイッターに動画が投稿された。
動画では、近畿日本鉄道の車掌がボタンについて「写真を撮るために使うようなものではない」と男性に注意していた。どんな状況だったのか、近鉄の広報部に詳しく話を聞いた。
「写真を撮るために使うようなものではない」と諭す
「もし写真を撮りたいんでしたら、もういっぺん出て、回って自分で撮って下さい。この電車に乗りたいんだったら、乗って下さい」
車両の端付近で、黒いリュックを背負った若い男性に向き合って、近鉄の車掌がこう諭す。
これに対し、男性は、「はい、すいません...」と小声で謝っている。この騒ぎで、乗客数人が様子を見ていた。
車掌は、少し開いた車両の端のドアをのぞいて閉めると、そばの壁に設置された通報装置に手を置き、「これは緊急用のものです」と強調した。男性は、理解したようで、「あ、はい、緊急用のもので...」と応じる。
「もしこれを押して、他のところで何かあった場合に、あなたはどうするんですか?」
「あなたがこれを押して、私がここで処理をしている関係で、その対応ができなくなるんですよ!」
車掌がこう指摘したうえで、「どうするんですか? そういう場合」と聞くと、男性は、小声で何か答えている。
「そうなりますよね。これは緊急用のものです。写真を撮るために使うようなものではない」
車掌は、こう告げると、その場を立ち去っていった。男性は、「はーい、はい、はい、はい」と右手を上げて理解したとの態度を示して終わっている。
この43秒の動画は、ツイッターで2022年8月12日に投稿された。
降車用のドアも開けてほしいと求める
この男性と車掌とのやり取りをスマホで撮ったとみられる動画は、40万回以上再生されており、様々な意見が寄せられている。
近鉄の広報部は8月16日、J-CASTニュースの取材に対し、動画が投稿された12日の21時ごろに、男性とのやり取りがあったと認めた。
広報部によると、名古屋市内の名古屋線・近鉄名古屋駅で、21時4分発の名古屋発津新町行きの急行列車で車内通報装置の赤いボタンが押され、乗務予定の車掌が現場へ駆け付けた。
車掌がボタンを押した男性に状況を確認したところ、男性は、カメラを持っており、電車の写真を撮りたいため、先頭車両の外側に付いていて夜間に前方を照らすための前照灯を点けてほしいと依頼してきた。運転士がまだ乗っていなかったため、前照灯は点けていなかった。ツイッターでは、車内のライトを消してほしいという依頼があったとされたが、そのような依頼は確認していないとした。
また、急行列車は、乗車用と降車用のホームに挟まれる形で停車しており、乗車側だけドアが開いていたが、男性は、降車側のドアも開けてほしいと言ってきたという。
車掌は、男性の申し出を断り、通報装置の使い方を説明した。男性には理解してもらったと判断し、この説明でボタンを押すのを止めたため、警察には通報しなかったという。
この騒ぎで、急行列車は、1分20秒遅れで名古屋駅を出発した。他の列車に影響はなかったという。広報部では、「ボタンは、急病の方がいらっしゃったときなど、車内で異常が発生したときに緊急用に押すものです。その使い方について、ご理解いただきたいと考えています」と話した。
なお、当時イベントなどはなく、鉄道ファンも集まっていなかったという。電車の撮影のために通報装置のボタンを押すというは、珍しいのではないかとしている。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)