政府が2022年8月15日に開いた全国戦没者追悼式で岸田文雄首相が述べた式辞では、「歴史の教訓を深く胸に刻み」という文言が3年ぶりに復活した。内容の多くは菅義偉前首相、安倍晋三元首相のものを踏襲したものの、少しでも「岸田カラー」を出そうと試みた可能性もある。
ただ、韓国メディアは第2次安倍政権発足までは盛り込まれていたアジア諸国への加害責任への言及が無かったことを問題視。批判的な論調に終始した。
アジア諸国への加害責任への言及なしを問題視
公共放送のKBSは、式辞が
「日本が侵略戦争や植民地侵奪でアジア諸国に損害を与えた事実や『反省』に言及しなかった」
とした上で、
「歴史の教訓を深く胸に刻み、世界の平和と繁栄に力を尽くしてまいりました」
のくだりについても
「教訓の具体的な内容や、日本がなぜ戦争の惨禍を経験したのかは説明せず、侵略戦争や植民地支配など、日本の加害行為で他国が経験した苦しみにも言及しなかった」
などと批判した。第2次安倍政権発足以降、アジア諸国への加害責任への言及がなくなったことも指摘した。毎日経済新聞も、この点を念頭に
「(安倍氏の)後継首相に就任した菅義偉氏も反省を表明せず、岸田首相もそれに倣った」
と論じた。
「積極的平和主義」は「戦争ができる国に変貌するという意味で解釈」
東亜日報は「反省の言葉なき77周年記念式典」の見出しを掲げた。式辞で「戦争の惨禍を二度と繰り返さない」と述べたことを紹介する一方で、「しかし、戦争の加害者として、いかなる責任や反省にも言及しなかった」。
「積極的平和主義」の文言が踏襲されたことについても、
「自衛隊の強化と防衛費の増加によって、戦争ができる国に変貌するという意味で解釈される」
と非難した。
一方、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が8月15日、日本の植民地支配からの解放を記念する「光復節」の式典で行った演説では、日本を「世界の市民的自由を脅かす課題に共に立ち向かわなければならない隣国」と表現。慰安婦問題や元徴用工による訴訟問題を念頭に
「日韓関係が普遍的価値に基づいて未来と両国の時代の使命に向かって進むとき、過去の歴史の問題は適切に解決することができます」
と述べ、直接の対日批判は避けた。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)