77回目の終戦の日にあたる2022年8月15日に東京・北の丸公園の日本武道館で行われた政府主催の全国戦没者追悼式で、天皇陛下が3年連続でコロナ禍に言及した。「様々な困難に直面」する中で「私たち皆が心を一つにし、力を合わせてこの難しい状況を乗り越え」ることを改めて呼びかけた。
岸田文雄首相は首相としては初めて式典に出席し、「おことば」に先だって式辞を述べた。内容の多くは菅義偉前首相、安倍晋三元首相のものを踏襲。安倍氏が掲げた「積極的平和主義」の文言が3年連続で登場し、第2次安倍政権発足以降10年連続でアジア諸国への加害責任には言及しなかった。ハト派の「岸田カラー」は必ずしも反映されなかったが、「歴史の教訓を深く胸に刻み」という文言が3年ぶりに復活。ロシアによるウクライナ侵攻を念頭に置いたとみられる「未だ争いが絶えることのない世界にあって」という表現も新たに登場した。
「私たち皆が心を一つにし、力を合わせてこの難しい状況を乗り越え」
天皇陛下は21年の「おことば」でコロナ禍を「厳しい感染状況による新たな試練に直面していますが」と表現。22年も「感染拡大による様々な困難に直面していますが」と言及し、続けて「私たち皆が心を一つにし、力を合わせてこの難しい状況を乗り越え、今後とも、人々の幸せと平和を希求し続けていくことを心から願います」と述べた。
例年の
「過去を顧み、深い反省の上に立って、再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い」
という表現も引き続き盛り込まれた。
首相式辞も大筋は例年の内容を踏襲。それでも比較的変化があったのは後半部分だ。平和国家としての歩みを強調するくだりで、21年は
「世界の誰もが、平和で、心豊かに暮らせる世の中を実現するため、力の限りを尽くしてまいりました」
としていた表現が
「戦後、我が国は、一貫して、平和国家として、その歩みを進めてまいりました。歴史の教訓を深く胸に刻み、世界の平和と繁栄に力を尽くしてまいりました」
に変化。19年以来3年ぶりに「歴史の教訓を深く胸に刻み」の表現が復活した。
安倍・菅政権の「積極的平和主義」も踏襲
「戦争の惨禍を二度と繰り返さない」に続く言葉は「この信念」から「この決然たる誓い」になり、20年と同じ表現に戻った。3年連続で「積極的平和主義の旗の下」で国際社会に貢献することをうたい、その直前にはロシアによるウクライナ侵攻を念頭に置いたとみられる「未だ争いが絶えることのない世界にあって」という表現が加わった。20、21年には登場したコロナ禍への言及はなくなった。
式典の運営にも引き続きコロナ禍が影を落とした。座席の間隔は大きく開けられ、「コロナ前」は約5000人いた参列者は600人弱にとどまった。ただ、東京都に緊急事態宣言が出ていた21年は22府県が参列を見送ったのに対して、22年は京都、愛媛、山口、沖縄以外の43都道府県から遺族が参列。3年ぶりに行動制限がなくなったことを反映した。
式典には天皇皇后両陛下、岸田氏、95歳から7歳までの遺族らが参列し、日中戦争と第2次世界大戦で犠牲になった約310万人を追悼した。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)