高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
給与引き上げは「夢のまた夢」...最低賃金31円増が「上げすぎ」である理由

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雇用確保し、経済成長に比し相対的に人手不足になってから賃金上昇

   まず最低賃金を政策的に引き上げて、全体の賃金引き上げに繋げるというのは、政策的に間違いだ。雇用の確保を行った後、経済成長に比し相対的に人手不足になってから、賃金は上昇していくものだ。

   学者の中には、労働生産性を上げることが賃金上昇という人もいるが、それはミクロ的な見方だ。相対的に労働生産性の高い人ほど高い賃金が得られるが、マクロとして全体の底上げにならず、マクロ経済成長の下で人手不足が賃上げには必要だ。これは、いわゆる「合成の誤謬」と言われるもので、ミクロでは正しいが、マクロでは思わぬ逆効果をもたらすものだ。

   いずれにしても、岸田政権はマクロ経済の意識が欠けていて、最低賃金を実力以上に引き上げた。適切な補正予算を打たずにGDPギャップを放置しているのは、ウクライナ情勢を受けてのエネルギー価格や原材料価格の転嫁もできず、賃上げに向けての大きな懸念だ。これでは、成長も不十分で雇用の確保もまともにできず、ひいては給与の引き上げは夢のまた夢の話だ。

   冒頭に述べたが、三村会頭は、政府に環境整備を要請している。それは秋の大型補正だが、岸田政権でできるだろうか。それが出来れば、多くが好転する。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。21年に辞職。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。


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