「本気で怒っています」日本酒老舗、相次ぐ「不審クレーム」に注意喚起 返金詐欺?実情を聞く

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  日本酒の蔵元を狙って同時期に相次いだ不審なクレーム電話に「本気で怒っています」−−。

  ある老舗のツイートが注目を集めている。電話の主は同一人物とみられ、異物混入や蕁麻疹の発症を理由に返金を求めるが、いずれも商品の現物はないと主張するという。関係者に話を聞いた。

  • 写真提供:日の丸醸造
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不審なクレーム、業界で相次ぐ

  声をあげたのは、秋田県横手市に蔵を構える1689年創業の「日の丸醸造」だ。従業員数13人、年間の製造量は約1500石(一升瓶にすると約15万本)と小規模ながら、代表銘柄「まんさくの花」シリーズや特別純米「うまからまんさく」などで親しまれている。

  同社は2022年8月2日に「今度は本気で怒っています」とツイートし、

「『商品に異物が入っていた』『飲んだらジンマシンが出た』といって酒蔵に軒並み電話をかけて金銭をだまし取ろうとしている詐欺が現在進行中のようです」

と訴えた。同社も電話を受けたといい、続く投稿で詳細を伝えている。当初は商品に不備があったものとして本気で心配したという。

  ところが電話の相手が商品について、友人からの貰い物で購入店は不明かつ現物は「地震で割れてしまった」と主張。代金は贈り主に支払い済みとしたうえで、現金での返金を要求してきた。

  一連のやり取りで異変を感じ、過去の経験から「おそらく詐欺だろう」と判断を下して応ぜず。わだかまりが残っていたが、所属組合から同電話に関する注意喚起が届いたとして「はっきり詐欺だとわかってほっとした」と経緯を述べている。

  投稿によると、同社がこのような事案を経験したのは4回目。初回は代品を送ってしまったと悔やんだ。「どうか今回はどこにも被害がありませんよう、祈るばかりです」と願っている。

  発端の投稿は3万5000件以上リツイートされ、同情が広がっているほか、「昔勤め先で似たことがあった」「こういう返金詐欺多いよね」「何度か経験あります」といった経験者の声も集まっている。

「人の善意につけ上がるようなことは止めてほしい」

  日の丸醸造のツイッター担当者は3日、J-CASTニュースの取材に対し、当該電話を受けたのは1日の出来事だと明かす。組合からは翌2日にメールが届いた。

  メールの内容を確認すると、全国各地の複数社から「クレーム的な怪しいと思われる」情報が寄せられたと周知している。同一とみられる茨城県の男性がツイートにあった理由で返金を求めるが、現物はなく、対応を断ると連絡がなくなるという。

  加えてメールには、案件の拡大につながる安易な対応をしないようにといった注意喚起と、情報提供の呼びかけが記されている。

  先のツイッター担当者によると、男性は推定20~30代で、同社には「酒瓶に黒い小さな異物が入っている」と主張した。返金を断った理由は商品の現物を確認できないためだ。

  ちなみに商品の出荷時には1瓶ずつ、内容物を目視で確認するなど商品管理に努めており、実際に異物が混入していたというクレームは過去5年まで遡ったとして1度もないという。

  同様の事案は10年以上前から見られるという。ただ食品業界の方が「確実に多いと思います」と私見を添える。過去3件はいずれも異なる相手だが、まずクレームから入り「最終的に返金を仄めかしてくる」。年齢や性別は幅広い。

  例えば数年前には、酒瓶を持った瞬間に底が抜けて床の絨毯が水浸しになったという話があった。これも後に組合から情報共有されたと担当者は話す。

  同社では被害の再発を防ぐよう、不審な電話に対するマニュアルを作成して教育を徹底しているという。業界内で伝わる情報のほか、電話番号の情報を共有する口コミサイトなども参照する。

  今回の事案を受けて、担当者は「人の善意につけ上がるようなことは止めてほしい」と改めて訴えた。投稿の反響には「沢山温かいコメントをいただきました。ありがとうございます」と感謝を表す。

組合は不審クレームに「詐欺という認識はない」

  日本酒造組合中央会(東京都港区)の総務部担当者も3日、組合員らに向けてメールを送付したのは事実だと取材に答えた。この事案について実害の報告はないとする。

  同じ内容のクレームが全国各地で同時発生した点は「通常だとありえないと思うんですよ」と訝しむ一方、先のツイートにあった詐欺とする見方については「私どもはそのようなことをメールに書いていません」といい、

「そもそも、この案件が詐欺か嘘かというのもよく分からないのが事実なんです。金品を要求する意図があったか私どもの方では分からない」

と見解を述べた。当該男性から電話を受けた各社が対応できない旨を伝えたのち、相手から更なる要求がないことから、「詐欺という認識はないです」と組合担当者は重ねる。

  なお怪しいクレームに関して組合員らから年に数件ほど問い合わせがあるが、報告は任意のため、発生件数の推移といった実態は把握していないという。

  メール配信の効果については、「(仮に詐欺だったとして)防ぐことが出来たのであれば、我々としては良かったなと思っています」 と話した。

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