「乗客2人」から2年弱で黒字化視野 ZIPAIRはどうやって成長を遂げたのか...西田真吾社長に聞いた

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「単一機材で短距離、多頻度運航」が伝統的なLCCのビジネスモデルだった

21年12月にはLCCとは初の「太平洋越え」路線を開設。サンタクロースのコスチュームでロサンゼルス行きのフライトを見送った
21年12月にはLCCとは初の「太平洋越え」路線を開設。サンタクロースのコスチュームでロサンゼルス行きのフライトを見送った

―― 以前はエアアジアのマレーシア-シンガポール線によく乗っていたのですが、これまでは同路線に象徴されるような「単一機材で短距離、多頻度運航」がLCCのビジネスモデルでした。ZIPAIRは「中長距離LCC」をうたっていますが、どのような工夫をして利益を出しているのですか。

西田: 「多頻度運航で、小型機で」というモデルは、おそらく皆さん、機材稼働を高めることを重視した結果です。1時間フライトして地上の折り返しを、LCCだと40~50分ぐらいでやるところが多いと思います。さらに1時間飛んで帰ってきて...、これを繰り返す。結局地上に降りる回数も増えるので、飛行機が空を飛んでいる時間は良くて(24時間のうち)12~13時間だと思います。我々は、その1.5倍ぐらい飛んでいます。例えばロサンゼルス線では10時間フライトして1時間ちょっとで折り返してきて、また10時間飛んで...。それでコストを薄めています。薄めたコストを基にした運賃で低価格を実現する、これが我々のモデルです。

―― 稼働のスケジュールが秘訣なんですね。

西田:おっしゃる通りです。LCCはみんなそうだと思います。やはり一番大事なのは、ダイヤですね。乗り入れ空港の発着枠、つまり「この時間に着いていい、この時間に出発していい」という点が一番大事です。その意味では、アジアの混雑空港(ソウルやバンコク)で後発組や新規参入組は好きな時間が取れない中で我々が狙ったダイヤを組めているのは、コロナ禍の間にあちこち飛んでいたおかげだと思っています。1機でデイリー運航をこの2路線で行っている(同じ飛行機を北米にもアジアにも飛ばしている)ので、24時間中18時間ぐらい飛行機を動かしていることになります。

―― 貨物便からスタートした苦労が報われる日が来ましたね...!

西田: 今、我々の乗り入れ地点を振り返ってみると、お客様の渡航先として人気があるのはもちろんですが、貨物需要もそれなりにある路線ばかり選んでやってきました。コロナ禍でも何とか路線を維持して、その結果、我々の好きなダイヤを確保することができました。

―― 「中長距離LCC」をうたうZIPAIRがソウル(仁川)に乗り入れたのは不思議だと思っていました。これは、最初からダイヤを確保しやすくする狙いだったのですか。

西田: 理由は3つぐらいあります。ひとつは、混雑空港に乗り入れて好きなダイヤを取るには今、という点。もうひとつは、貨物収入があったので、飛べば飛ばすほど当時は赤字を減らすことが出来ました。3つ目は、パイロットと客室乗務員(CA)養成です。飛行機2機から始めましたが、その後3~4号機と来るのは分かっていました。運休していると(実際の路線での)訓練ができないので、この3つの理由で頑張ってきました。

―― 燃油高が続きます。燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)はJALの場合、8月から欧州や北米行きで片道4万7000円に値上がりしています。そんな中で、ZIPAIRはサーチャージを徴収しない方針です。例えば成田-ロサンゼルス便は7月下旬~お盆まで満席ですが、その前後は片道5万3289~8万3829円(7月20日時点)。サーチャージと大きく変わらない金額です。こういった状況で利益は出るのですか。出ないとすれば、FSC同様にサーチャージの徴収を検討しますか。

西田: エネルギー価格が上がったら、必ずどの交通事業者もコストが上がります。我々も油の値段が上がるというのは、しんどいといえばしんどいです。一方で、少し説明しにくいですが、サーチャージは設定していい人と良くない人がいると思っています。「今、燃油高だからサーチャージが必要です」と言って、それでも乗っていただけているお客様がいるマーケットは、サーチャージを設定したらいいと思うんです。それは大体ビジネス需要、官公庁の出張の需要だったりするので、そういう航空会社はサーチャージを設定しています。我々LCCは、他のLCCも含めて誰もサーチャージを設定していません。なぜかというと、サーチャージを設定したら需要がなくなってしまうからです。

―― なかなか悩ましいところですね。

西田: 具体的には運賃のレイヤー(階層)を意識しており、このレイヤーの範囲の中で価格をコントロールして、コストをしっかりカバーできているところです。燃油高の部分を意識しながら値付けをするのは事実です。冬ダイヤの売り出しを始めましたが、基本的には今あるレイヤーの中で価格コントロールをやっていける範囲の中で、というところを考えまいた。もちろん、最安値で出す座席数が減ってきたり、というところはありますが、しっかりと最低価格は維持しながら続けているところです。
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