陸上自衛隊の内部資料「教範」とみられる冊子が、オークションサイトに複数出品されていることが分かった。
防衛省報道室はJ-CASTニュースの取材に、元自衛官に教範の回収を呼びかけるなど対策を講じるとした。
所属、氏名は塗りつぶし
「完全非売品超希少」「部隊連携の要、通信技術について書き尽くした書」「核兵器、化学兵器、生物兵器等を敵に使用された場合の対処法についてまとめられた書になります」――。
オークションサイト「ヤフオク!」で、陸上幕僚監部や陸自通信学校などが制作した教範だと喧伝する出品物が複数確認できる。
いずれも表紙に「部外秘」「用済み後は確実に焼却する」と機密性の高さがうかがえる印字があり、「一番最後にある所属、氏名欄は塗りつぶされています」と説明する商品もある。
発行年度は幅広く、古くは戦後まもなく、新しいものだと2017年の記載がある。数千~数万円で取引され、10万円超で落札された事例もあった。
教範をめぐっては、陸自隊員の不祥事が過去にあった。神戸新聞によれば、破棄しなければならない教範など計39冊を譲渡していたとして、2等陸曹が18年4月、停職20日の懲戒処分を受けていた。
「『秘密』に該当する情報は含まれていません」
防衛省報道室に5月下旬、取材を申し込むと、事実確認をする旨の返事があり、7月29日に回答があった。
陸自の教範管理については、15年に外部への流出が発覚し、翌年から(1)隊員ごとの教範の保有状況の一覧表の作成(2)隊員の保有する教範への氏名等の記入(3)教範の隊内販売を終了し、部隊が保有する教範の貸与制に移行――と管理体制の強化を図ったという。
陸自では15年に、元東部方面総監が在日ロシア大使館の元駐在武官に教範を漏洩する問題が明るみとなった。
報道室担当者は「現在、出品が確認されている陸上自衛隊の教範に類似するものについては、仮にそれらが陸上自衛隊の教範であれば、現行の管理体制が確立する前に流出したものと推定されますが、いずれも『秘密』に該当する情報は含まれていません」との見解を示す一方、
「いずれにせよ、引き続き教範の適切な管理について隊員への指導を徹底するとともに、現行の管理体制確立以前に退職した元自衛官等がいまだ教範類を保有していることが想定されることから、OB団体等を通じ、元自衛官等に対し、教範の回収等を呼びかけてまいります」
としている。