調査で見えた「『コスパ』重視の恋愛観」
比較的社会的資源に恵まれた高学歴・正規雇用者の20代男女を対象に行った大森氏のインタビュー調査でも、恋愛が面倒だという意見や、「コスパ」重視の恋愛観が見られたという。
「『コスパ』というのは、デートにかかる費用だけではなく、時間や相手にかける精神的なコミットメントなどさまざまな要素が含まれます。経済成長が停滞し、生活が苦しくなる中で、時間もお金も、精神的な余裕も有限であるからこそ、生活に直接的には影響しない恋愛の優先順位が低くなるのは当然の意識だろうと思います」
経済力が低下する中で恋愛の優先順位が下がることは当然であるとしつつも、2015年に行われた国立社会保障・人口問題研究所の第15回出生動向基本調査で、「結婚」が持つ意味は依然として大きく、愛情や精神的な充足よりも生殖(子どもをもつこと)に価値を置く傾向が高まっていることが明らかになったという調査結果を踏まえ、大森氏は次のように述べた。
「恋愛を面倒なものとする若者たちでも、時間的経過とともに、自身の結婚適齢期(子どもを持つ時期)に合せて恋愛市場へと回帰する様子も調査では確認できました。しかし、経済的な余裕がない若者にとっては、そうした依然として変わらない結婚観、そして結婚と恋愛、さらには生殖の位置付けによって、結婚のみならず、恋愛のハードルをますます高めているのではないかと考えます」