「コミュニケーションのあり様の変化」
2000年代以降、繰り返しメディアで取り沙汰されているという「若者の恋愛離れ」。
大森氏は、経済力の低下や恋愛・結婚に対する意識の変化のほかに「コミュニケーションのあり様の変化」を、その要因の一つに挙げている。
「コミュニケーションツールの発展やSNSの普及によって、私たちの生活は便利さと豊かさを享受するようになりましたが、一方で、コミュニケーションが過密になりすぎ、人間関係が四六時中監視されるような社会にもなりました。さらに、対人関係においては、『社会的』であること(互いに空気を読み合い、傷つけ合わない優しい関係を築くこと)が求められ、高度なコミュニケーション能力が求められています。未婚化や交際経験のない若者の増加について、『対人関係能力の低下』についても問題視されますが、私自身の見解としてはむしろ逆で、『社会的でありすぎることによって、社会から撤退する』というパラドックスが、恋愛関係にも起きているのではないかと考えます」
「社会的でありすぎることによって、社会から撤退する」――。空気が読めて、コミュニケーション能力が高い人でも、同性/異性同士の友人関係を大切にするからこそ、「デート」に発展しにくいという若者たちも多くいるのではないかと、大森氏は述べる。
「また、日本ではジェンダーによる役割期待から依然として男性から女性にアプローチすることが求められます。若者のコミュニケーション特性と重ね合わせて考えてみても、特に日本の男性にとって、友人という境界線を超えて、アプローチすることは超えるべきハードルが高いのだろうと思います」