「手話もCМ表現の一部として、見て楽しめるものにしたい」
ACジャパンは2018年度から広告内に手話や字幕を導入した。ボタン操作による字幕表示を導入している広告は既に広まっているが、ACジャパンは「公共広告」と言う立場から、幅広い人々に情報を届けるためにボタン操作なしで常時表示する形をとっている。
「ACとしては出来上がったCМに単に手話を通訳として画面合成するのではなく、手話もCМ表現の一部として、見て楽しめるものにしたいと考えています。今回は『ラップ』が表現の中心になるため、人選にも難航しました」
正装で真面目に真摯に手話を行う人が、ラップが始まるとノリノリになる。そのギャップのインパクトを与えられる人として、木村晴美さんが採用された。
木村さんは、国立障害者リハビリテーションセンター学院・手話通訳学科の教官で、「手話通訳のレジェンド」と呼ばれているという。NHK手話ニュース845の手話通訳キャスターとしても広く知られている。
「木村さんはこちらの期待以上の手話アクターとして今回のCМに貢献していただきました。事前に練習を行っていただいた事もあり撮影当日はむしろスムーズに一気に撮影することができました。CМの限られた秒数の中でどういう動きで表現するのがベストなのか、その場で調整、検討しながら作り上げることができたのも木村さんの経験値による表現の幅があったからこそと感じています」
手話の監修チームのメンバーで、ユニバーサルデザインコンサルタントの松森果林さんも、自身のブログで撮影をこう振り返っている。
「撮影現場では、0.0何秒という単位で細かく確認をしますがラップのテンポにあったリズムとキレッキレぶりに演出家さんたちも舌を巻いておりました」
こうして生まれた大反響の「寛容ラップ」。ACジャパンは「今回のメッセージが広く多くの方々に好意的に受け止められたことはとても嬉しく思います」と述べ、今後も広告活動を通じて、人々の行動、社会の動きへもつながるようなメッセージの発信に努めていくと意気込んだ。
(J-CASTニュース編集部 瀧川響子)