最終審査で評価された「ラップ」の強み
視聴者の「色眼鏡」を外した同作は、どのように生まれたのか。ACジャパンは次のように説明する。
テーマは「不寛容な時代~現代社会の公共マナーとは」。ACジャパンが毎年3000人の消費者を対象に実施する「公共広告に関する生活者調査」の結果を参考に決定した。ACジャパンは「立場や考え方の違いを受容し、多様な人々が共存していく社会について考えたい」と述べる。
企画はコンペティション形式で決定している。テーマに関して全国の広告会社からアイディアを募り、審査を行う。今回は多くの候補作の中から、東急エージェンシー関西支社の「寛容ラップ」が選ばれた。最終審査会の審査委員からは、次のようなコメントが寄せられたという。
「ラップという手法によりコミュニケーションの速度が速く、伝えたい情報量も無理なく伝わるのではないか。意外性もあり、若者とお婆さんがキャッチーなコミュニケーションをしていることで、若者に対してもメッセージが届き、話題になる気がする」
キーメッセージは、「たたくより、たたえ合おう」。CМを見た人に「相手をディスる(たたく)ラップバトルをするのでは?」という想像をさせながら、実際は互いをディスらないラップバトルをするというアイデアが、企画の肝となる。
「強面のお兄さんが実はやさしいラップをする、繊細で周りのことを気にするお婆さんが実はラップが超上手い、無表情で冷たそうなギャルが実はとても優しい歌を熱唱する、というギャップが生まれることによって、人を見た目で判断しないという点を含め、多様性と寛容さをお伝えできると思いました」