大泉洋の兄に「函館市長選出馬」報道 「身内に芸能人」なら有利?識者に聞いた

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   2023年春に行われる函館市長選に、同市保健福祉部長の大泉潤氏(56)が立候補する意向だと報じられた。弟は北海道で絶大な人気を持つ俳優・大泉洋さん(49)とあって、選挙戦への影響が注目されている。

   実は、家族の中に著名な芸能人が居ながら、市長になった政治家は他にもいる。身内に芸能人がいることは、選挙を戦う上でアドバンテージとなるのだろうか。選挙に詳しい識者に見解を聞いた。

  • 兄の函館市長選出馬意向が報じられた大泉洋さん
    兄の函館市長選出馬意向が報じられた大泉洋さん
  • 函館市長選への立候補意向が報じられた大泉潤氏(函館市地域交流まちづくりセンターの2022年1月発行の広報紙より)
    函館市長選への立候補意向が報じられた大泉潤氏(函館市地域交流まちづくりセンターの2022年1月発行の広報紙より)
  • 兄の函館市長選出馬意向が報じられた大泉洋さん
  • 函館市長選への立候補意向が報じられた大泉潤氏(函館市地域交流まちづくりセンターの2022年1月発行の広報紙より)

吹田市長の長男は「ジャルジャル」後藤さん

「兄はものすごい昔からまじめで...本当にまじめな人です。(中略)兄が賢かったもんだから、なんとなく兄の後を追うところはあったんでしょう」

   大泉洋さんは14年10月5日放送のトーク番組「誰だって波瀾爆笑」(日本テレビ系)で、7歳離れた兄・潤氏の印象をこう語っていた。朝日新聞の22年7月12日の報道によると、潤氏は早稲田大学法学部卒業後、函館市に入庁。秘書課長、保健福祉部次長、観光部長を経て19年から現職に就き、新型コロナウイルス対策などを行ってきた。

   7月12日に、現職の工藤寿樹氏(72)の任期満了に伴う函館市長選への立候補に意欲を示していることが地元紙・北海道新聞などで伝えられると、ネット上で話題に。「水曜どうでしょう」(北海道テレビ放送=HTB)のヒットから北海道を代表するスターになった弟・洋さんの名前が、潤さんの選挙戦でも活かされるのではないかという声が相次いで聞かれた。

   実は近年、身内に芸能人を抱えながら選挙を戦い、市長に上り詰めるケースが相次いでいる。

   15年5月から大阪府吹田市長を務める後藤圭二氏(65)の長男は、吉本興業所属のお笑いコンビ「ジャルジャル」の後藤淳平さん(38)だ。

   圭二氏は1980年に東京水産大学(現:東京海洋大学)を卒業後、吹田市に入庁。水道部、市長室参事、環境政策推進監、環境政策室長、道路公園部長等を歴任した。15年4月の市長選では自公推薦で立候補し、元職の阪口善雄氏(民主党・社民党推薦)を918差の僅差で破り初当選。19年4月の市長選では再選を果たした。

   一方の淳平さんは、20代の頃から相方の福徳秀介さん(38)とともに実力派コンビとして注目され、「爆笑レッドシアター」「めちゃ×2イケてるっ!」(ともにフジテレビ系)などバラエティー番組に出演。20年には「キングオブコント」で優勝するなど、今では日本を代表するお笑い芸人の一人だ。

横須賀市長の長男は...あの「おバカタレント」

   17年7月から神奈川県横須賀市長を務める上地克明氏(68)の長男は、歌手・俳優の上地雄輔さん(43)だ。

   克明氏は1977年に早稲田大学商学部を卒業後、一般企業に就職。その後、衆議院議員の田川誠一氏の秘書を務めた。83年には神奈川県議選宮前選挙区、87年には同横須賀選挙区から出馬したものの、いずれも落選。

   かつては選挙で苦杯を舐めたが、03年に横須賀市議選に初当選すると、以降4期連続で当選した。17年の同市長選では、自民・民進・公明の推薦と地元選出の小泉進次郎衆院議員の支援を受け、現職だった吉田雄人氏を破り初当選。19年4月にはLGBTなどの性的少数者カップルの婚姻関係を認める「パートナーシップ宣誓制度」を導入するなど実績を残し、21年6月の市長選では再選を果たしている。

   一方、横浜高校野球部時代に「平成の怪物」松坂大輔さんとバッテリーを組んでいたことで知られる雄輔さんは、07年にクイズ番組「クイズ!ヘキサゴンII」(フジテレビ系)で「おバカタレント」としてブレイク。同番組で結成されたグループ「羞恥心」やソロ活動「遊助」など、歌手としてもヒットを飛ばした。俳優としてドラマや映画にも出演し、硬派な役も任されている。

   後藤氏の吹田市(人口約39万人)と上地氏の横須賀市(同約38万2000人)は、潤氏が立候補を検討する函館市(同約24万6000人)と同じ「中核市」に位置付けられる。政令指定都市を除く20万人以上の人口を持つ市が対象で、一般的な市よりも強い事務的権限を都道府県から与えられている。市長には、多くの市民の負託にこたえる責任が生じる。

家族に芸能人が居ても...「それほど大きな影響は与えない」

   身内に芸能人を持つ候補者が地方選などに出馬した場合、選挙戦への影響はあるのだろうか。長年にわたって選挙取材を続け、「コロナ時代の選挙漫遊記」(集英社)などの著書があるジャーナリストの畠山理仁(みちよし)さんは7月20日、J-CASTニュースの取材に、こう見解を示す。

「それほど大きな影響は与えないと思います。ただし、まったく影響がないわけではありません。日本の選挙は投票時に名前を書く『自署式』です。投票所前に設置されるポスター掲示場を見て投票先を選ぶ人が多いことからもわかるように、日本の選挙で大切なのは、有権者にどれくらい認知されているかという『知名度』です。身内に著名人がいない人よりは話題になりやすいため、プラスに働く面はあると思います」

   ただ、後藤市長と上地市長の当選については、息子が芸能人であるアドバンテージを受けた結果だったとは「言えないと思います」とみる。

「そもそも上地市長はご子息が芸能界でブレイクする前に市議になり、地方政治家としての実績を重ねてきました。後藤市長も市役所での勤務が長い。どちらもご自身の力で選挙に勝っていると考えて間違いない。大泉さんも市役所の勤務が長い。市長選挙に挑戦するキャリアとしては一般的であり、大きく外れていません。たまたま家族に著名人がいた、というケースだと思います」

   地方の首長選挙は、候補者個人の支援者による票や支援組織の票、団体票など、『知名度』とは無縁なところでの投票が主だと畠山氏は説明する。吹田市、横須賀市、函館市の直近の市長選では、いずれも投票率が50%を切っていた。半分以上の人が選挙に行かないという状況の中では、「選挙に確実に行く人、政治に興味がある人にとって、(家族に芸能人がいることは)それほど大きな影響は与えないと思います」と分析する。

   では、潤氏が出馬した場合、弟が洋さんであることはアドバンテージになりうるのだろうか。

「選挙をするのはあくまでもご本人ですから、大きなアドバンテージにはならないと思います。身内や応援者がいくら有名でも、候補者個人の得票に大きなプラスとはなりません。それは東京都知事選挙で366万票以上の票を得た小池百合子東京都知事が応援しても、先の参院選で当選できなかった候補者がいることでも明らかです。応援があればプラスに働くこともあるかもしれないから、やれることはやる。それぐらい候補者は一票を取るために必死の戦いをしていますが、アドバンテージになるとまでは言えないと思います」
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