ビザなしで渡航できる国・地域の数をランキング化した「ヘンリーパスポートインデックス」の最新版が2022年7月19日付で発表され、日本のパスポートが1年ぶりに単独1位に返り咲いた。
ランキングはコンサルティング会社の「ヘンリー&パートナーズ」が国際航空運送協会(IATA)のデータをもとに集計し、四半期ごとに発表している。発表では、この「パスポートインデックス」の順位と、シンクタンクの経済平和研究所が毎年公表している「世界平和度指数」の間には「強い相関関係」があると説明。「パスポートの強弱は、持ち主の生活の質に直接影響し、状況によっては生死の問題にもなりかねない」としている。
続くのはシンガポール、韓国、ドイツ、スペイン
今回発表されたのは22年第3四半期(7~9月)のランキング。到着時にビザが取得できる場合や、渡航前にウェブサイトで登録する「電子渡航認証」(eTA)と呼ばれる制度を利用するケースを含めると、日本のパスポートは193か国に「ビザなし」で渡航できる。日本に続いたのがシンガポールと韓国で192か国。さらにドイツ、スペイン(190か国)、フィンランド、イタリア、ルクセンブルク(189か国)、オーストリア、デンマーク、オランダ、スウェーデン(188か国)が続いた。逆に「最弱」なのがアフガニスタン(27か国)。イラク(29か国)、シリア(30か国)、パキスタン(32か国)、イエメン(34か国)と続く。
21年第4四半期(9~12月)から22年第2四半期(4~6月)にかけて3四半期連続で日本とシンガポールが1位タイだったが、1年ぶりに日本が単独1位になった。
一方、「世界平和度指数」は、「安全・安心」「国内・国際紛争」「軍事化」の3つの指標で「平和度」を評価する。22年のランキングではアイスランドが1位で、ニュージーランド、アイルランド、デンマークと続き、シンガポールが9位、日本は10位だった。
ウクライナ侵攻で世界中から非難を浴びるロシアは119か国にビザなしで渡航でき、「パスポートインデックス」では50位。「世界平和度指数」では160位。アフガニスタン、イエメン、シリアに次ぐワースト4位だ。一方、ウクライナのパスポートランキングは35位で144か国にビザなし渡航が可能。「世界平和度指数」では153位だ。
パスポートの強弱は「生活の質に直接影響し、状況によっては生死の問題にも」
発表によると、「パスポートインデックス」上位10か国は「世界平和度指数」でも上位10か国に入っており、下位10か国についても同様。ロシアについては
「EU加盟国、オーストラリア、カナダ、日本、ニュージーランド、韓国、米国、英国で領空が閉鎖されているため、ロシア国民は、ハブになっているイスタンブールとドバイを除けば、事実上大半の先進国で旅行ができない状態」
だと指摘している。「ビザなし渡航」が可能な国の数は侵攻前と変わっていないが、領空閉鎖で国外渡航のハードルは大幅に上がっている。一方、ウクライナ人をめぐる状況は、次のように指摘している。
「ロシアのパスポート保持者に課された厳しい制限とは対照的に、今世紀最大の欧州難民危機となった事態に対応する緊急計画に基づき、侵攻で避難したウクライナ人には最長3年間EUで居住し働く権利が認められている。EUが最近、ウクライナにEU加盟候補国としての地位を与えるという画期的な発表を行ったため、ウクライナのパスポート保持者の渡航の自由度は、この数年でさらに増すとみられる」
オックスフォード大学サイード・ビジネス・スクールでフェローを務めたスティーブン・クリムザック・マッシオン氏は発表に談話を寄せ、ランキングの意義を
「パスポートはこれまで以上に『名刺』の役割を果たし、どのパスポートを持ち、どこへ行くのかによって、どういった歓迎を受けるのか、どこへ行けるのか、そして現地に着いた時にどの程度安全かが変わってくる。これまで以上に、パスポートをA地点からB地点に行くための『単なる渡航種類』だと考えるのは間違いだ。パスポートの強弱は、持ち主の生活の質に直接影響し、状況によっては生死の問題にもなりかねない」
と説明している。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)