新型コロナウイルスの感染防止対策について、季節性インフルエンザと同じ「5類」へ引き下げるべきではないかとの意見が、一部の医療関係者や識者から改めて出されるなどして、論議になっている。
一方で、現場の医師らからは、コロナはインフルと違う未知数な存在で、もし5類に変更すれば、医療費がかかり入院調整も受けられなくなるとの指摘も出た。こうした議論について、厚生労働省はどのように考えているのか、結核感染症課に話を聞いた。
「#コロナを5類以下に」ツイッターでは、こんな投稿が相次ぐが...
コロナは、すでに第7波に突入したとされ、2022年7月21日は、東京都内で感染者数が初の3万人超えとなり、過去最多も更新した。感染の急拡大で、保健所や指定医療機関のひっ迫が報じられている。
特に、ワクチン接種率が低い若年層への広がりが懸念されており、各地の小児科では、診察を待つ家族が列を作っているとの報告もツイッターで相次いだ。感染による隔離や自粛などで、社会生活へ多大な影響を及ぼしているとの指摘も多いようだ。
オミクロン株による重症化率や死亡率が以前のものより低いとされていることから、ネット上では、2類相当とされる現在の「新型インフルエンザ等感染症」から5類へ感染対策を変更するべきではないかとの意見が相次ぐようになった。
そうすれば、保健所の負担が軽くなり一般医療機関でも受診できるようになる、社会生活や経済活動への影響も少なくすることができる、などの理由からだ。ツイッター上では、「#コロナを5類以下に」などのハッシュタグで、現在の対策からの変更を求める投稿が多数集まっている。
一方で、5類にすぐ変更することに対して、慎重な見方をする医療関係者も少なくない。
内科医で小説家でもある知念実希人氏は20日、すぐに5類に引き下げるよう訴えるリプライに対し、「5類に下げたら、熱が出ている子供が減るんですか?」とツイッターで疑問を呈し、次のように説明した。
一部知事が5類変更を促し、東京都医師会も「5類相当」を提言
「本当に5類、5類言っている人は、5類になったら何が起こると思っているんだろう? 医療費がかかるようになり、 入院調整しなくなるから、重症患者でも入院できなくなるだけなのに...... 人間の都合でウイルスは態度を変えてくれはしませんよ」
この投稿は、1700件以上リツイートされており、反響を呼んでいる。医療関係者からは、同様に5類への変更に疑問を呈する投稿がいくつかあり、5類にすればすべて解決するというのは誤りだとの指摘も出ていた。
もっとも、医療関係者からは、段階的に5類へ進むか、5類に近い分類にすべきだとの意見はある。一部の知事からは、5類にすべきだとの内容の意見が出たと報じられており、東京都医師会は6月14日、いきなり5類は難しいとしても「5類相当」にするよう見直すべきとした提言を行った。
政府内でも見直しの動きはあり、新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は、7月14日の会見で、コロナを日常的な医療に位置付けるため、5類に近い方向を目指すべきとの考え方を示した。
5類に変更した場合の影響について、厚労省の結核感染症課は7月21日、J-CASTニュースの取材にこう説明した。
「3割自己負担が発生し、都道府県の入院調整もなくなる」
「入院勧告といった法律上の措置ではなく、普通の医療になりますので、医療費の3割は自己負担になります。都道府県が入院をコントロールしている広域調整もなくなりますので、個別に対処する必要が出てきます。救急現場では、入院の調整はあり、重病で入院はできますが、対応の幅が狭くなるということです」
ただ、5類にすれば、保健所の負担が疫学調査などに絞られて軽減され、一般の医療機関でどこでも治療を受けられるメリットはあるとした。
政府の松野博一官房長官は、13日の会見で、5類への変更について、「最大限の警戒局面にある現時点で、変更することは現実的ではない」と述べた。その理由として、「専門家からは、オミクロン株であっても、致死率や重症化率がインフルエンザよりも高く、さらなる変異の可能性もあると指摘されている」ことを挙げている。
同省の結核感染症課でも、同様な考え方を示したうえで、次のような見通しを取材に話した。
「変異株には、ワクチンがどれだけ効くのかも分からず、重症化リスクも依然として残っています。危険性が高くないのが5類と位置付けられており、難しいとは断言できませんが、慎重に検討する必要があります。現段階で見直す場をつくる予定はなく、それがいつになるかも分かりませんが、可能性があるとすると5類だと考えています」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)