テラーノベル社(東京都港区)は2022年7月18日、小説投稿アプリ「テラーノベル」の運営体制を謝罪した。ガイドラインに違反している作品への対応が遅れるなど、「弊社の運営体制に起因してクリエイターのみなさまにご不安な思いをおかけしてしまっておりました」としている。
アプリをめぐっては、ツイッター上で「悪質な無断転載が横行している」との指摘があり、物議を醸していた。
無断転載の疑いのあるイラストや写真が投稿される
アプリ「テラーノベル」は、チャット形式の小説を投稿できるサービス。Z世代をターゲットに、2017年7月にサービスを開始した。公式サイトによれば、ユーザー数は約600万人で、作品数は約102万作にのぼる。17年12月には橋本環奈さんを起用したCMを放送し注目を集めた。
ツイッターでは22年7月中旬ごろから、アプリ内で無断転載の疑いがある画像の投稿が相次いでいると話題になった。アプリ内に投稿された小説のイメージイラストや作者アイコンの画像として、自身のイラストが無断で利用されたと訴える声も複数ある。
編集部がアプリ内の小説を検索すると、人気アニメのイラストを転載したものや、ジャニーズアイドルなど実在の芸能人の画像を用いた作品も投稿されていた。
テラーノベル運営は17日、アプリを問題視するツイートに対しリプライで謝罪した。
「この度はご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません。本件運営として非常に重く受け止めており、無断転載を確実に取り締まるための対応を行って参ります」
通報されたコンテンツに対し事実確認が確認できたものについては削除対応を行っているものの、自社で判断が難しいものはプロバイダー責任制限法に基づいた対応を行っているとしている。
また運営は、「今後は監視体制の強化のみならず、サイトパトロールやアプリの年齢制限なども検討していく所存でございます」という見解を示した。
アプリの対象年齢は、アップルストアでは12歳以上、Googleストアでは17歳以上に指定されており、18歳以上を対象とした作品も複数投稿されている。テラーノベルが21年9月に26歳未満のアプリユーザーを対象に行ったとするアンケートには、12歳未満と回答したユーザーが24.7パーセントだった。
煩雑な通報フローも問題視
運営の見解に対し、ツイッターでは削除請求を行うための手続きが煩雑だという指摘も寄せられた。著作権の侵害を受けたユーザーは、削除請求を行うために、テラーノベルに対し請求書や印鑑登録証明書、本人確認資料などの書類を用意し、切手を貼付した返信用封筒を送付する必要がある。
この指摘に対し運営は「書類の準備等お手間をおかけしてしまう点を課題認識しておりまして、現在、より簡便な方法で対応が可能となるように弁護士先生とフローを検討しております」とリプライを送った。
翌18日には、公式サイト上に「テラーノベルの運営体制に関するご説明」を掲載し、改めて謝罪した。
「これまでも、創作活動の場、そしてクリエイターのみなさまを守るため、ユーザから通報いただいた作品に関して、事実関係が確認できたものについては削除対応を行っており、弊社として判断が難しいものにつきましてもプロバイダー責任制限法に基づき対応を行ってまいりました。
しかしながら、この度ユーザのみなさまからご指摘いただいたように、ガイドラインに違反している作品への対応が遅い、権利侵害の通報に関するフローが煩雑である点等、弊社の運営体制に起因してクリエイターのみなさまにご不安な思いをおかけしてしまっておりました。この点に関し、弊社としても深く反省するとともにお詫び申し上げます」
今後は、監視人員の増強やサイトパトロールの強化、権利侵害通報フローの簡素化、ウェブでの通報機能追加などを行うとした。