高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
自民党「安倍派」どうなる? 囁かれる岸田派優遇...人事で範を示してもらいたい

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   2022年7月10日の参院選投開票の直前、8日にあり得ないことが起きた。安倍晋三元首相が遊説先の奈良で銃撃され亡くなった。

   まずはご冥福をお祈りしたい。安倍元首相は日本史上もっとも傑出した政治家だ。日本が偉大な人を失ったのは大きな痛手だ。脱力感とともに、どこにぶつけていいのか分からない怒りもこみ上げてきた。

   岸田文雄首相は、「戦後最大級の難局、有事の政権運営が求められる」とし、与党内の結束を強調した。8月中下旬にも予定されている党役員人事・内閣改造に向けて、不安要素がある。とりわけ、「安倍派」がどうなるかだ。安倍さんの存在はあまりに大きく、誰も代わることは出来ないともいわれている。安倍さんは、人から愛される天才だ。今回の悲報に対し、世界各国や国内の多くの人が哀悼の意を表していることからも十二分にわかる。

  • 岸田文雄首相
    岸田文雄首相
  • 岸田文雄首相

岸田派会長を続ける岸田氏

   これまでも、安倍さんが言うからという理由で難問を安倍さんに頼ってきた。友人であった麻生太郎元首相は告別式の弔辞で「『安倍は何と言っている』と、各国首脳が漏らしたことに私は日本人として誇らしい気持ちを持った」と述懐している。まさにそのとおりだ。

   安倍派も、安倍さんあっての派閥だ。それがどうなるのかは、自民党内の勢力関係、ひいては日本の今度の在り方にも影響してくる。

   束ねる人には、一定の経験とそれなりの人徳が必要だが、今の安倍派で衆目の一致する人は見当たらない。当面、集団指導体制とならざるを得ないのだろう。その場合でも、「頭」をどうするかは大問題であるが、こういう一大事の時には、二代目や親族というのが社会でも相場だろう。

   8月中下旬にも予定されている自民党の役員人事と内閣改造で、噂されているのが、岸田首相の「宏池会」(岸田派)優遇だ。

   首相は、形式上派閥を離脱するのが通例だった。しかし、岸田氏は岸田派会長を続け、派閥の定例会合にも出席し、「宏池会として久しぶりの政権」だと強調しているそうだ。そのため、党人事や閣僚人事で宏池会優遇がささやかれている。

再び「検討と先送り」では話にならない

   もっとも、人事がどうなっても岸田政権の「財務省主導内閣」ぶりには変化はないだろう。そこで経済問題や安全保障をしっかりできるだろうか。

   岸田政権は、参院選までは「検討と先送り」をモットーとし、参院選では「決断と実行」を掲げた。参院選後、再び「検討と先送り」では話にならない。

   岸田首相は、11日の記者会見で「安倍元首相の思いを受け継ぎ、拉致問題、憲法改正など難題に取り組む」と語った。

   であれば、党役員人事、内閣改造で範を示してもらいたい。積極財政、安全保障とともに、憲法改正をやってほしい。それが安倍元首相が最も望んでいたことだ。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。21年に辞職。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。


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