なぜ2枚目に「政党名」書く人多い? 「候補者の顔の見える選挙」掲げて20年も...浸透進まず

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   2022年7月10日に投開票が迫った参院選で、与野党が共通して訴えているのが、「2枚目の投票用紙に『候補者名』を書いてもらう」ことだ。

   1枚目の投票用紙には選挙区の候補者名を書き、2枚目の比例区の投票用紙には、政党名か比例区の候補者名を書く。この「非拘束名簿式」が採用されたのは01年の参院選。「候補者の顔の見える、国民が当選者を決める選挙」にすることが目的だったが、実際に候補者名を書く人は全体の4分の1程度に過ぎない。制度導入から20年が経っても、必ずしも浸透が進んでいるとは言えない状況だ。

  • 2枚目の投票用紙には何を書きますか?(画像は2016年4月に都内で行われた18歳選挙権啓発イベントでの模擬投票風景)
    2枚目の投票用紙には何を書きますか?(画像は2016年4月に都内で行われた18歳選挙権啓発イベントでの模擬投票風景)
  • 2枚目の投票用紙には何を書きますか?(画像は2016年4月に都内で行われた18歳選挙権啓発イベントでの模擬投票風景)

党費を企業に肩代わりさせて名簿の順位を上げようとしたスキャンダルが契機

   1998年の参院選までは、「拘束名簿式」で、有権者は政党名を書いて投票していた。各政党の総得票数に応じて議席を配分し、政党が提出した名簿の上位から当選が決まる仕組みだ。これに対して「非拘束名簿式」では、政党名と個人名の得票数の合計に応じて議席を配分し、個人名の得票数が多い順に当選者が決まる。基本的には名簿に載る人の間で順位はつかない。例外が、当選する人を優先的に決める「特定枠」で、今回の参院選では、自民党、れいわ新選組、ごぼうの党が設定している。

   名簿に載った候補者は、拘束名簿式では政党としての活動しかできなかったが、非拘束名簿式では、個人名入りのビラやポスターの使用、個人演説会もできるようになった。

   非拘束名簿式の導入は、久世公尭金融再生委員長(自民、当時)が、企業から多額の資金提供を受けていた疑惑が00年7月に発覚したことがきっかけだ。自らが次期参院選の名簿で上位に掲載されるように党員を集め、その党費を企業に肩代わりさせていたとされる問題だ。当時の森喜朗内閣の支持率が低迷する中、非拘束名簿式が浮上。野党から「党利党略」の批判が上がる中、自民が押し切って00年10月に可決・成立した。当時の国会審議では、拘束名簿式では「過度の政党化、政党の行う順位づけが有権者にとってわかりにくい」として、非拘束名簿式の導入で「候補者の顔の見える、国民が当選者を決める選挙にする」などと説明された。

4人中3人が政党名を書いて投票

   19年の参院選では、比例区全体の得票が5007万2198.778票だった。そのうち、政党名での投票は3755万5004.057で、候補者名による投票が1251万7194.721票。全体の4分の1に過ぎない。

   比例区の候補者は、特定の業界団体や労働組合などが擁立するケースも多い。その場合、業界関係者にしか「顔」が浸透せず、それ以外の有権者は政党名を書く傾向にあるのも事実だ。つまり、個人名で得票が多いのは、元々知名度が高かったり、強い組織に支えられたりする場合だ。

   非拘束名簿式の導入以降、個人で最も多い得票は公明党の浜四津敏子氏(04年、約180万票)。自民党の舛添要一氏(01年、約159万票)、公明党の山本香苗氏(01年、約129万票)が続く。上位10人のうち、舛添氏以外の9人を公明党の候補者が占めている。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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