マナーの悪い鉄道ファンが一部でいるとして、秋田県内のJR奥羽本線沿いに土地を持つ地主が、「無許可で撮影するなら通報する」などと警告する立て看板を周辺に設置した。
所有地などは周囲よりやや高台にあり、人気の撮影スポットのようだ。警察が出動するトラブルにもなっており、その状況について地主や警察に話を聞いた。
「許可がない方を見つけた場合は通報または全禁止」
「最近、撮り鉄のマナーが悪い方がごく一部います」。立て看板は、「撮り鉄さんへ」のタイトルで、手書きの文がこんな出だしでつづられている。
そして、次のように続けて、一部鉄道ファンに警告した。
「なのでここの土地の所有者の許可なく鉄道写真は禁止します。写真を撮りたい方は所有者まで!! 所有者の許可がない方を見つけた場合は通報または全禁止します」
この看板の写真は、自らも鉄道ファンという男性が2022年7月3日にツイッターに投稿した。ツイートでは、農地の中で少し高台になった場所の写真も載せている。
投稿によると、秋田県三種町内のJR奥羽本線・北金岡―森岳両駅間の撮影ポイントに看板が立てられた。前日2日の土曜日にマナーの悪いファンが撮りに来たため、この土地の地主が3日早朝に立てたそうだ。
一部ファンが地主宅前の私有地を車で勝手に通行して子供が怖がったり、撮影後にタバコの吸い殻やペットボトルなどのゴミを撮影スポットにポイ捨てしたりしたという。その結果、この場所で撮影するときは地主の許可が必要になったといい、投稿者の男性は、一部ファンに対して、「最低限のマナーを守り撮影しましょう」「自分が出したゴミは、持ち帰りましょう」と呼びかけていた。ただ、投稿では、地主について、「凄く優しい人でした」と報告していた。
撮影スポットに土地を持つ地主は7月5日、J-CASTニュースの取材に対し、トラブルが起きた2日の状況をこう話した。
「なんなら、パイロンぐらい置いてけよ」と口答え
「午前9時ごろに、家の前をすごいスピードで暴走した車がいたと電話で聞き、急いで帰宅して現場に駆け付けましたが、もうその車はいませんでした。そこにいた鉄道ファンの方に聞くと、同じ車が2回も暴走していたとのことです。よちよち歩きを始めた小さな子供がいるのに、これでは怖くて外で遊べません」
撮影スポット周辺に車を止めたファンに、地主が「私有地なんですけど」と声をかけると、「なんなら、パイロンぐらい置いてけよ」と口答えされたともいう。
その後、もう通行してほしくないと、地主が自宅の車2台を周辺に置いて対処すると、11時ごろに、鉄道ファンの車が2台を通り越して止めたので、警察に通報した。
警察が駆けつけて、「許可をもらった人はいいですが、ここは私有地なので帰って下さい」と伝えると、その車は去ったという。地主は、警察からの指示で、翌朝に立て看板やパイロンを設置したとしている。
「趣味だと考えてこれまで許可してきましたが、これ以上マナーが悪くなれば、撮影スポットを完全に封鎖しますよ。家の前を車が何台も通るので、子供が外で遊べません。所有地にタバコを捨てていく人もいて、火事になったら責任を取るんですかと言いたいです」
現地で車の暴走を目撃したという鉄道ファンも、ツイッターにその時の様子を投稿しており、2人組がラリー並みの速さで車を走らせ、しばらくして別の列車を撮るため同様なスピードで戻ってきたという。
能代署「撮り鉄と地主の双方に防犯指導を行った」
JR東日本では、大型観光キャンペーンの一環として、観光列車「カシオペア紀行」や急行「津軽」を臨時運行しており、7月2日もこれらの列車が奥羽本線を走って、沿線には多くの鉄道ファンが撮影する姿が見られた。
写真をツイッターに投稿した男性は4日、「狙った列車の追っかけをして、早く撮影しようと、スピードを出して家の前を通行したのでしょう。最低限のマナーを守るのは当たり前で、同じ撮り鉄として許せなかったので投稿しました」と取材に明かした。男性は、地主の家族と顔見知りで、以前から許可を得て、寝台列車の写真をこの場所で撮っていたという。
今回のトラブルについて、秋田県警の能代署は4日、2日の午前11時ごろに同署に地主から連絡があったと取材に認め、その経緯を次のように話した。
「自分の敷地に撮り鉄が車を止めているとの連絡で、警察官が現場に向かって対応しました。撮り鉄の方は、『塀に囲まれておらず、私有地と分からなくて止めた』と言っていました。暴行や脅迫といった事件ではなく、通報された方が『事前に許可を取ってもらえばよかった』とお話しになり、双方が納得して終わりました。不法侵入には当たらず、一般の敷地ですので駐車違反でもありません。こちらでは、双方に防犯指導を行っており、通報された方には、自分の土地と明示するため、私有地なので立ち入らないよう看板を設置することなどをアドバイスしました」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)