2022年7月4日未明から、ツイッターに「南海トラフ」というフレーズがトレンド入りした。
ツイッター上では、南海トラフ地震が同日に発生するという予言を知ったとしつつ、その真偽について思案を巡らせる声が続々と上がった。その多くは予言に信憑性はないと判断するものだったが、中には、「南海トラフの予言怖くて全然寝れない」といった、予言を真に受けたツイートも見られるなど、一定の注目を集めた形だ。これらの「騒動」について、J-CASTニュース編集部は識者に意見を聞いた。
2054年から来た人物が南海トラフ地震の発生を警告した!?
これらの声が上がるきっかけとなったのは、2019年6月30日に、とあるアカウントが行ったツイート。その内容は、自らが2054年からやってきた人間であると主張しつつ、2022年7月4日に南海トラフ地震が起こり、多数の犠牲者が出ると主張するものだ(当該ツイート及びアカウントは現存せず)。
南海トラフ地震と言えば、将来発生することを政府が想定している大規模地震であり、その知名度は高い。その南海トラフ地震が発生すると主張したツイートは出された当初こそ大きな話題となったが、その後は沈静化。だが、発生日となる7月4日が近づいた6月下旬に一部ネットメディアが「予言に現実味か」と報じるなどしたため、再び人々の脳裏に浮かび始めたようだ。
しかし、気象庁は公式サイトで「南海トラフ地震は、おおむね100~150年間隔で繰り返し発生していることが分かっていますが、その発生間隔にはばらつきがあり、震源域の広がり方には多様性があることが知られています。また、地震の発生時期や場所・規模を確度高く予測することは困難であると考えられています」と呼びかける。
しかも、「2054年からやってきた」という荒唐無稽な主張も相まって、ツイッター上では「7月4日に南海トラフ発生するって言われてるけど、デマですよ」といった声が大勢を占めるなど、一笑に付した人がほとんどだった。
となれば、そもそも、きっかけとなった2019年のツイートを行った情報の発信者は何を思ってこのようなツイートをしたのか。編集部はITジャーナリストの井上トシユキ氏に、その意図の分析を依頼した。
冗談でネタ出しする人がいる一方で、自らの「予知能力」を信じている者もいる!?
まず、井上氏は、これら予言系の話は信じるに値しない与太話だと一蹴しつつ、過去の類似の例を提示した。
「この手の『予言芸』で思い出されるのは、2010年に『2ちゃんねる』のオカルト板に書き込まれた、2062年からやってきた未来人と主張する者による予言です。内容は『未来からやってきたと主張する者が、あれこれ示唆的な内容を述べていた』というもので、その後、それらの中にはネットユーザーの間で『的中した』ともてはやされるものもありましたが、正直なところ、与太話の域を出るものではありません」
となると、そもそも、与太話の発信者とはいったいどんな人物なのだろうか?
「『予言芸』は純粋なネタ話としてネタ出しを楽しんでいるという人がいる一方で、『自分には予知能力がある』と、全力では信じないまでも、半分程度でも信じてしまっている人が、未来人を装ってネット掲示板やツイッターで情報発信している場合もあるように感じられます。また、今回話題になった『2054年から来た人間による南海トラフ地震の予言』は、その構造からして『2062年からの未来人』のフォーマットを借りたものでしょう」
また、井上氏は「予言芸」を行う動機について、以下のように推測した。
「ネタ出しのつもりで行っている人は承認欲求を満たすためでしょうし、自らの予知能力を半分程度でも信じてしまっている人は、自らが想定する災害による犠牲者を減らすべく『親切心』で情報発信を行っているのではないでしょうか。特に、後者の場合、『自称予知能力者』の人が未来の不幸を『予知』してしまった場合、『著名人の死』などに比べると情報発信を行いやすいという点があるからです。著名人の死を予言して外れた場合はネット上で非難囂々となるでしょうが、地震などの災害について予言した場合、外れた場合は『外れて良かったね』といった反応が期待でき、『予言を行ったこと自体』に非難が集まりにくいため、『親切心』を発露させやすいのでしょう」
(J-CASTニュース編集部 坂下朋永)