プロボクシングの世界バンタム級3団体統一王者・井上尚弥(大橋、29)の次戦に大きな注目が集まっている。
世界4団体王座統一を目指す井上の標的は、WBO世界バンタム級王者ポール・バトラー(英国、33)。すでに両陣営が交渉のテーブルに付き話し合いは順調に進んでいるようだ。年内開催に向けて今後も交渉は続くとみられるが、このまますんなりと交渉が成立するのか。
J-CASTニュース編集部はプロボクシングで数々の世界タイトルマッチをプロモートしてきた協栄ジムの金平桂一郎会長(56)にプロモーター目線で分析してもらった。
井上「流れ的にはいいと聞いている」
井上は2022年6月27日に東京・丸の内の日本外国特派員協会で行われた会見の席で、バトラー陣営との交渉の進捗を次のように語っている。
「バトラーとの交渉につきましては今、所属ジムの大橋会長からは交渉中と。流れ的にはいいと聞いている。具体的な日程などはまだ聞いていない。開催国については4団体統一の試合が実現するのであれば日本でもアメリカでもイギリスでもどこでもいいと思っている。実現に向けて進めていきたいなと思っています」
一方、バトラー陣営も王座統一戦に前向きな構えを見せている。バトラーと契約しているプロモート会社「プロベラム」は、井上の会見を受け27日に公式サイトで両者のフェイスオフショットを公開した。このことからも交渉が順調に進んでいることが推測される。
スポーツ紙などの報道によると、世界4団体王座統一戦が実現すれば井上は3億円以上のファイトマネーが見込めるという。
金平会長は世界タイトル戦の交渉における主な要素として「日程」「開催地」「ファイトマネー」の3点を挙げ、「外堀はほぼ埋まっていると思います」とし、「開催地やギャラの面でも水面下でキャッボールは始まっていると思う」との見解を示した。
WBC会長「誰もが認めるチャンピオンを見たい」
そして金平会長は一連のメディア報道にも言及。「メディアではバトラー戦の井上選手のファイトマネーが3億円以上見込まれると報じられていましたが、これは井上陣営の駆け引きのひとつかもしれません。メディアを通じバトラー陣営に対して井上選手は3億円以上の価値があるのだと」と語った。
また、世界王座認定団体WBC(世界ボクシング評議会)のマウリシオ・スレイマン会長(52)の発言が統一戦を後押しすると指摘。英メディア「PLANET SPORTS」(WEB版)によると、スレイマン会長は「誰もが認めるチャンピオンを見たい」との意向を示し、実現に向けて柔軟性を持って他の認定団体やプロモーターらと働いていることを明かしたという。
複数の王座がかけられた王座統一戦では、それぞれの団体の指名試合がネックとなるケースがある。各団体はそれぞれ王者に対して指名試合を義務付けており、王者は団体が定める期間内に指名試合を行わなければならない。王座統一戦を優先させる場合、団体と指名挑戦者陣営との調整が必須で承認されなければ王座はく奪の可能性もある。
金平会長は「指名試合などの関係で承認団体が統一戦を認めないこともある。WBCもそのようなことが過去にありました。ただ今回スレイマン会長が認めていますので、これが統一戦を後押しする形になっている」と語った。
さらに「指名挑戦権を持つ選手が権利を主張する声があまり聞こえてこない。統一戦が実現すれば井上選手は階級を上げてくる。ですから今後の展開を静観していると思います。中には井上選手に挑戦したいと思っている選手もいると思いますが、この前のドネア戦を見せられるとトレーナーやプロモーターが好んで対戦するとは思えません。こういうことも含めてやりやすい環境にあるでしょう」と持論を展開した。
井上は28日にインスタグラムを更新し、所属する大橋ジムで行われた公開練習の画像を投稿。世界4団体王座統一戦に向けてジムワークを再開した。