プロボクシングの世界バンタム級3団体統一王者・井上尚弥(大橋、29)が2022年6月27日に東京・丸の内の日本外国特派員協会で会見を行い、将来的なビジョンを明かした。
6月7日のノニト・ドネア(フィリピン、39)戦でWBC王座を獲得し、WBA、IBFと合わせて世界3団体王座を統一した井上。今後は世界4団体王座統一へ向けてWBO世界バンタム級王者ポール・バトラー(英国、33)との対戦を目指していく。
バトラー陣営との交渉は良い流れに
この日の会見で井上は改めて35歳まで現役を続ける意向を示し、最終的には無敗でプロキャリアを終えることを理想とした。また、バンタム級で世界4団体王座統一後は階級を一つ上げ、スーパーバンタム級での世界4団体王座統一を目標に掲げた。
年内の開催を目指しているWBO王者バトラーとの統一戦に関して、現在両陣営が交渉中であることを明かし、所属するジムの大橋秀行会長(57)から交渉がいい流れにあると聞かされたという。具体的な日程はまだ決まっていないが、開催国については日本、米国、英国いずれの国でも良いと明言した。
会見の中盤にバトラー戦後の話題に移り、スーパーバンタム級に君臨する2人の王者の名が挙がった。
現在、スーパーバンタム級にはムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン、27)、ステファン・フルトン(米国、27)が存在し、アフマダリエフがWBA、IBF王座、フルトンがWBC、WBO王座を保持している。両者による王座統一戦の可能性もあり、実現すれば4団体統一王者が誕生する。
「スーパーバンタム級は自分の中でベストな階級になる」
報道陣から「(スーパーバンタム級で)最初に戦いたい相手はどちらでしょうか?」と問われた井上は、「両選手がこの先、統一戦をする流れになるのならば自分が4団体をバンタム級で取り、その両者(いずれか)が4団体王者になり、4団体王者同士が戦うのが自分の中では理想なのかなと思います」と語った。
そして「スーパーバンタム級に上がる前にウォームアップ的な試合が必要か?」「すぐに階級を上げるのか?」など問いに対しては明確なビジョンを明かした。
「今の状態であればスーパーバンタム級は自分の中でベストな階級になるのではないかと思っている。ここはマッチメイクのタイミング次第になるかとは思いますが、(転向後)一発目で挑戦が出来るのであれば自分はしたいなと思っている。そういう流れ、タイミングがないのであれば一戦挟むことも出てくるかなと思います」
井上が見据えるスーパーバンタム級王者アフマダリエフとフルトンはいずれも無敗の強豪だ。16年リオデジャネイロ五輪銅メダルのアフマダリエフはプロ8戦目にWBA、IBF王者ダニエル・ローマン(米国)と対戦し判定勝利で王座を獲得した。
「ボクシングはそんなに甘くないスポーツ」
21年4月にはIBF世界スーパーバンタム級暫定王者・岩佐亮佑(セレス)との王座統一戦に臨み、5回TKOで王座統一に成功。今年6月25日にはロニー・リオス(米国)を12回TKOで下し王座を防衛。プロキャリアこそ11戦(全勝8KO)とまだ浅いが、豊富なアマチュアキャリアに裏打ちされた技術に加え、パワフルなボクシングが持ち味のボクサーだ。
一方のフルトンはアマチュアを経て14年10月にプロデビュー。21年1月にWBO世界スーパーバンタム級王者アンジェロ・レオ(米国)に挑戦し判定勝利で王座獲得に成功した。同年11月にはWBC同級王者ブランドン・フィゲロア(米国)と対戦し判定勝利を収め世界2団体の王座を統一し、戦績を21勝(8KO)とした。
井上が理想とするのが、アフマダリエフとフルトンによる王座統一戦が行われ、その勝者と4本のベルト懸けて対戦することだ。ただ時期尚早ということで両者の直近の試合映像は見ていないという。
プロキャリアの最終地点を35歳に置く井上は「そこまでの道のり、理想とするならば無敗でゴールすることが理想ですけどもボクシングはそんなに甘くないスポーツ。まして階級を上げていけば階級の壁にもぶち当たることもこの先出てくると思う。ボクシングをやって良かったなと思う最終の35歳であれば自分はボクシングをやってきて満足出来るのかと思います」と語った。