擬人化に卒業式...サポート終了に悲喜こもごも 「Internet Explorer」が語らずにはいられないワケ

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   ツイートまとめサービスTogetter(トゥギャッター)を運営しているスタッフがTwitterで注目された話題を厳選し、考察するコラムの第56回をお送りします。今回のテーマは「Internet Explorerのサポート終了」についてです。

Togetter社が解説する「3分くらいで分かる週刊Twitterトレンド」<出張版>

   Webサービスやソフトのサポート終了が発表されるとTwitterで盛り上がることがしばしば起こります。2019年3月31日に「Yahoo!ジオシティーズ」がサービス終了した際も、Twitterでは惜しむ声が多数寄せられました。

<「Yahoo!ジオシティーズ」サービス終了...おまけページがあの頃を完全再現した仕様に - Togetter>

  • 提供:Courtesy of Kiyoung Jung/AFP/アフロ
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ブラウザシェアの変遷

   今回、Twitter上で盛り上がったのは「Internet Explorer 11」(以下、IE)がサポートを終了した、という話題です。

   今からおよそ1年前の2021年5月19日、米Microsoftは2022年6月15日にIEのサポートを終了すると発表しました。「サポート終了」は実質、アプリケーションの終了に等しいもの。その日が近づくにつれ、Twitter上にはIEを惜しむ声だけでなく、さまざまな感想が投稿、拡散されるようになったのです。

   まずは、関係者による貴重な発言をご紹介しましょう。IEの開発に携わった技術者、中島聡さんが語ったのはブラウザシェアの変遷についてです。

   1996年当時、ブラウザといえばNetscape(Firefoxの前身)が代表的でした。Netscapeからシェアを奪うべくMicrosoft社はIEの開発に力を入れ、「結果としてIEのシェアは70%を越し、Netscapeは瀕死の状態に」なったと語っています。

「ようやくお亡くなりになった」25年前にIE3開発に携わったエンジニアがブラウザシェアの変遷について語る

   ニ大巨頭と言えるブラウザ同士のシェア争いが記憶に残っている人も多いでしょう。特にNetscapeに親しみを持っていたユーザーは、当時は最大シェアを勝ち取ったIEがついにサポート終了する時代になった......ということに複雑な感情を持ったのでは。

   こうして当時の実情をよく知る人が背景を語った連続ツイートは多くの人に注目されていました。

職場ではサポートに伴う業務が発生

   シェアが大きかったブラウザだからこそ、「サポート終了」を知って混乱するユーザーの姿も投稿されました。

   「インターネットが使えなくなるのか!」と慌てる上司のブラウザを変更し、スタートページを「Yahoo!JAPAN」に設定することで事なきを得た、というエピソードが話題に。

<上司「インターネット使えなくなるのか!」私「大丈夫です(規定ブラウザ変更」IEサポ終でこんな業務が発生してる模様 - Togetter>

   ブラウザの変更で、少なからず業務に影響が出たという職場もあったようです。ある会社では、使用ブラウザを変更したことで「ブラウザに保存していたためパスワードがわからない」という問い合わせが大量に発生したというエピソードが。

<IEがサ終してEdgeに移行したことにより絶対に答えられない問い合わせが大量発生→ユーザーが本当に欲しいものは... - Togetter>

   多くのウェブブラウザにはネットショップやWebサービスなどのログインパスワードを保存する機能がついています。仕事で使われる各種ログインパスワードの管理をどうすべきか、あらためて考えさせられる出来事でもありました。

エンジニアから不満の声があったIE

   IEの後継としてリリースされたMicorsoft Edge(以下、Edge)が登場したあともIEを使い続けるユーザーがいたため、各WebサービスではIEでの使用も想定する必要がありました。

   しかし、IEとの互換性に悩んでいたエンジニアやデザイナーも少なくなかったようです。同じCSS(Webページのスタイルを指定するための言語)を使用しているのに、Edgeでは想定通りの表示となるがIEでは表示が崩れてしまう......という事例が多発していたそう。

<同じCSSなのにInternet ExplorerとMicrosoft Edgeの差がこちらになります「IE早く滅んでくれないか」 - Togetter>

   これらの投稿からは、エンジニア泣かせの存在でもあったことがうかがえました。

擬人化された「IEちゃん」を見ると切なさがつのる

   サポート終了で混乱するユーザーもいれば、喜ぶユーザーもいるIE。しかしIEの立場に立ってみると、切なさを感じる人もいたようです。

   2013年、「IEを擬人化したツイート」が拡散。IEを「たまにしか会わない女性」に見立て、久しぶりにIEを起動したことを「久々に女性の部屋に訪れた」こととして表現した内容でした。

   さらに、このツイートを元にしたイラストも登場するほど「IE擬人化」の話は盛り上がり、投稿を見たユーザーから「IEちゃんが不憫」という感想が集まりました。

<IEを擬人化してみたけど切なすぎる・・・ - Togetter>

   少し使いにくいところも含めて、複雑な感情を持っていたユーザーも多かったようです。

終了の日、IEの思い出画像が拡散

   そして、サポート終了日を迎えると、よりダイナミックな動きがありました。IEにはツールバーを複数追加できる機能があり、ツールバーをできるだけ多く追加した画像と共に「思い出をありがとう」とツイートするユーザーが。

<「インターネットが狭い」懐かしのツールバー特盛のIE思い出画像「これぞインターネッツ」 - Togetter>

   また、当日は日本マイクロソフト社のデベロッパーサポートチーム、ユスキィ (Yusuke Hara)さんを招いた「IE卒業式」と題したイベントが開かれました。

   IEにまつわるライトニングトークの発表や「卒業証書」の授与、IEを模したケーキなどが振る舞われるなど盛大なものでした。

<Internet Explorer 卒業式 - Togetter>

   このイベントに関するハッシュタグ「IE卒業式」を付けてツイートされた発言からは、出席はしていないもののIEに対して関心の高いユーザーの声も。やはりIEに対する思いはさまざま抱えつつ「終了」と知ると感慨深いものがある、というツイートが中心となっています。

IE終了の話題が盛り上がった理由は?まとめ

   TwitterでIE のサービス終了の話題が盛り上がった理由として考えられるのは次の3つです。

● シェア率70%越えの一大ブラウザだったため知っている人が多い
● サポート終了に伴う職場のITエピソードも新たにシェアされ話題になった
● エンジニアやデザイナー泣かせだったことが、強く残る思い出になった

   かくいう筆者も初めて使うようになったブラウザはIE でした。幼い頃にワクワクした気持ちで「e」のアイコンをクリックし、ネットの海に飛び込んだ人も多いのでは。「ありがとうIE」の思い出を胸に、今はChromeを使って記事を書いています。

   以上、Togetterがお送りする「3分くらいで分かる週刊Twitterトレンド出張版」でした。次回もお楽しみに。

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