「こういうのでいいんだよ」――。ネット上でこんな声が聞こえてくるのは、コンビニ・ローソンストア100(神奈川県川崎市)が販売する「だけ弁当」シリーズだ。ウインナーやミートボールなど、おかずを「一品だけ」載せた弁当で、発売から1年で累計約200万食を売り上げるヒット商品となった。
税抜き200円という低価格も特徴で、飲み物やサラダなどとの「合わせ買い」に適している。食料品の値上げラッシュが続くが、同社の担当者は「200円で継続して販売していきたい」と話す。
構想10年...見た目と裏腹な「苦難の道のり」
「だけ弁当」シリーズの展開が始まったのは2021年6月。第1弾商品「ウインナー弁当」のおかずは、ケチャップがついたウインナー5本だけだった。
あまりにシンプルな弁当だが、発売までの道のりは平坦ではなかった。発案したローソンストア100の林弘昭次世代事業本部・統括マネジャーは6月22日、J-CASTニュースの取材に、構想から商品発売まで10年の歳月を要したと語る。
「ウインナーはお弁当に欠かせないおかずですが、端っこの方にちょこっと置いてあるだけで、メインにはなれないような存在でした。『ウインナーだけのお弁当』にもお客様のニーズはあると思い、商品部にはずっと『作ろう』と言い続けてきました。ただ、見た目や価格の問題などがあり、なかなか発売には至りませんでした」
22年2月28日に配信された「だけ弁当」シリーズのニュースリリースには、開発を依頼した商品部から「売れる訳がない」と一蹴されたというエピソードも記載されている。
16年には、当時林氏が店舗の運営担当として在籍していた近畿地区で発売予定だったものの、林氏の関東異動に伴い計画は白紙に。そこから5年が経ち、近畿時代に一緒に商品開発を進めていた担当者が関東へ異動してきたことで、ようやく発売までこぎつけた。
当初は関東地区限定のみの取り扱いだったが、そのシンプルさが評判を呼び、21年8月には全国へと拡大。ローソンストア100を代表するヒット商品になった。
その後は「ミートボール弁当」(21年11月発売)、「のり磯辺揚弁当」(22年3月発売)が登場し、22年6月15日までに3商品累計で194万食を売り上げている。6月29日にはシリーズ第4弾として、タルタルソースをつけて食べる「白身フライ弁当」が発売予定だ。
なぜ200円?
シリーズのヒットについて、林さんはこう受け止めを語る。
「競合他社さんのお弁当は、基本的には彩りが良かったり、おかずの数が多いものばかりです。でも、実際には『美味しそうに見える』かどうかを気にせず、おかず単品だけの弁当があってもいい、と考えていた方もたくさんいらっしゃったのかなと思います」
「だけ弁当」シリーズは一般的なコンビニ弁当と比べてサイズが小ぶりなこともあり、サラダや他のおかず、ドリンク、デザートと一緒に購入する消費者が多いという。そして、200円という価格設定も「合わせ買い」を意識したものだ。
「私もそうですが、妻子がいるサラリーマンですと、使えるお金が限られてきます。限られたお金の中で考えると、昼食は500円くらいで抑えたいというのが皆さんの希望だと思うんですよ。でも、実際に外食してしまうと、800〜1000円かかってしまう。お弁当が200円くらいであれば、サラダや飲み物などを買い合わせても500円以内で済むんです」
同社では一食200円という価格設定を維持するために、「バラン」と呼ばれる緑色の間仕切りの不使用、プラスチック蓋ではなくラップの使用、既存商品と同じ弁当容器を使用するなどして、コストカットをしているという。
現在、食品業界では値上げの波が押し寄せている。今春には大手コンビニ各社が、弁当や麺類、パンなどの値上げを行った。「だけ弁当」の「税抜き200円」という価格設定はどうするのだろうか。
「もちろん、200円で継続して販売していきたいと思っています」
林氏は「値段を上げると、他の弁当とそんなに差がなくなってしまう」とし、「だけ弁当」の強みである「低価格」を守りたいと話す。
シリーズの今後については「5弾6弾は考えていますけど、それは内緒です」。林氏の頭の中には、次なる「だけ弁当」のアイデアが眠っている。