プロボクシングの世界5階級制覇ノニト・ドネア(フィリピン)の実父でトレーナーを務めるノニト・ドネア・シニア氏が、スーパーフライ級でもドネアが世界の頂点に立てることを確信していると2022年6月22日に地元メディアが伝えた。
井上に衝撃TKO負けで進退不透明
フィリピンの放送局「GMA」(WEB版)は、「『ドネアはまだスーパーフライ級トップ選手を倒すことが出来る』とノニト・シニアは言っている」とのタイトルで記事を公開し、ドネアが置かれている現状などを分析した。
ドネアは6月7日にさいたまスーパーアリーナで行われた世界バンタム級3団体王座統一戦でWBA、IBF世界バンタム級王者・井上尚弥(大橋)と対戦し2回TKO負けを喫した。無冠となったドネアは進退に関して明言を避けており、今後は不透明な状態にある。
「GMA」によると、ドネア・シニア氏は「ドネアが115ポンド(52.16キロ=スーパーフライ級リミット)に落とせるならば、チョコラティート(ローマン・ゴンサレスの愛称)を打ち負かすことが出来る」と主張している。
「ロマゴン」の愛称で日本でも人気のあるゴンサレスは、ミニマム級、ライトフライ級、フライ級、スーパーフライ級の4階級を制覇したニカラグアの英雄。過去には米国の権威ある専門誌「ザ・リング」が作成するパウンド・フォー・パウンド(PFP=階級の壁を越えた最強ランキング)で1位にランクしたこともある世界的ボクサーだ。
井上のパンチは「過去に受けたパンチの中で一番強かった」
ドネア・シニア氏がドネアのスーパーフライ級に言及した背景には、過去のドネアの発言が関係しているとみられる。
ドネアは20年10月に海外専門メディアの取材に対して、バンタム級の世界王座に返り咲いた暁には階級を1つ下げてスーパーフライ級の世界王座に挑戦する意向を示していた。世界5階級制覇のドネアはスーパーフライ級も制しているものの、09年に獲得したのは暫定王座だったため、完全なる世界5階級制覇達成をするために正規王座獲得を目指していた。
当時、スーパーフライ級は、WBA王者ゴンサレスをはじめ、ファン・フランシスコ・エストラーダ(WBC=メキシコ)、井岡一翔(WBO)、ジェルウィン・アンカハス(IBF=フィリピン)ら強豪王者が君臨しており、その中でドネアはゴンサレスとの対戦を望んだ。
新型コロナウイルスの影響などもあり、ドネアの青写真は実現せず21年5月にWBC世界バンタム級王座を獲得すると、同年12月に暫定王者との王座統一戦に勝利。そして今年6月7日に井上との再戦で王座を失った。
ドネアの進退に関して地元メディアも注目しており、なかには引退を勧告するボクシング・アナリストもいる。井上戦後、所属するプロモート社を通じて「過去に受けたパンチの中で一番強かった」と振り返ったドネア。今後の言動に注目される。