業界団体「被害者救済に焦点を当てすぎて、通常業務が配慮されなかった」
AV新法の施行前にもかかわらず撮影中止などの影響が出ているのかについて、業界の「適正AVプロダクション」でつくる日本プロダクション協会の担当者は6月22日、J-CASTニュースの取材に次のように説明した。
「フリーの方は、メーカーからLINEなどでスケジュールを押さえるよう依頼されて撮影しています。メーカーでは、現在の契約で仕事を進めていいのか判断に迷っており、リスクを回避しようと撮影を中止にしたりしているのだと思います。法が成立したのできちんと準備しようとして、混乱しているようですね」
プロダクションに所属する出演者は、営業担当者が準備をしているが、それでも新しい契約書を作ろうとして影響が出てくると担当者は明かした。
「メーカー専属の出演者でしたら、契約に余裕がありますので問題は出ないと思いますが、それ以外の出演者は、これまで、オファーが出るのは1週間から10日前のことも少なからずありました。また、例えば、撮影の3日前などに性感染症や新型コロナの検査で陽性が判明したとき、法施行後には、他の出演者への差し替えができなくなることも危惧しています」
新法の国会審議に当たっては、第3者団体のAV人権倫理機構はヒアリングに呼ばれたものの与えられた時間はわずか数分、メーカーやプロダクションの業界団体はどこも呼ばれなかったという。
「今回は、被害者救済に焦点が当たっており、それはとても大切で必要なことだと思います。しかし、救済に焦点が当てられすぎて、通常業務に配慮がされなかったのはとても残念です。自ら望んで働く女優は多いのですが、その人たちの職業選択の自由や経済活動の自由という憲法に違反するのではないかと疑問です。AV女優がかわいそうな救わないとならない存在であると印象付けられることで、AV女優であったことがスティグマとなる懸念もあるように思います。
また、今回の法律では男優も出演者として条文に入っており、例えば、代打で差し替え出演などの対応ができなくなる懸念があるため、働きにくさを感じていると思います。
表現活動を規制する内容を盛り込んで欲しいと被害者支援団体の指摘があるので、今後、表現に規制が入るのではないかということも危惧しています。法の施行後、2年以内には見直されることになっていますので、早急に検討して頂き、そこで適正AV業界の業務について理解していただければと思っています」
内閣府の男女間暴力対策課は22日、取材に対し、次のように答えた。
「ツイッター上などで意見などが出ていることは承知していますが、議員立法で成立した経緯がありますので、何か申し上げる立場ではないと考えています。付則にある見直しの条項に従って、改正すべきところがあるか今後検討されることはあると思います」
なお、AV新法は、22日に公布されており、翌23日から施行される。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)