東京五輪公式映画は「フィクションの部分ある」 河瀬直美氏が自信「映画監督のスキルを全部投影」

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   2021年に開かれた東京五輪公式記録映画のうち、アスリート以外に焦点を当てた「東京2020オリンピック SIDE:B」の試写会が2022年6月21日、東京・丸の内の日本外国特派員協会で開かれ、総監督の河瀬直美氏らが記者会見した。

   「SIDE:B」では、聖火リレーに喜ぶ子どもたちなど、前向きな大会準備の様子も描かれるが、1年間の延期、式典演出チームの解散、組織委員会の森喜朗会長の辞任、コロナ禍での開催に反対するデモなど、さまざまな出来事に大会が翻弄(ほんろう)される様子も盛り込んだ。アスリートに焦点を当てた「SIDE:A」は6月3日に上映が始まったが、SNSで「映画も無観客」と皮肉られるほどの不入りが続く。ただ、河瀬氏は、「あなたしか撮れないもの」を求めたIOC(国際オリンピック委員会)の依頼を「全うできたのではないかと思う」、「これまでの映画監督としてのスキルを全部投影して作り上げたものであるという風に、誇りを持って言える」などと話し、作品の完成度に強い自信を見せた。

  • 日本外国特派員協会で記者会見する河瀬直美監督
    日本外国特派員協会で記者会見する河瀬直美監督
  • 「東京2020オリンピックSIDE:A/SIDE:B」の総監督は河瀬直美氏が務めた。アスリート以外に焦点を当てた「SIDE:B」は6月24日に上映が始まる (c)2022-International Olympic Committee-All Rights Reserved.
    「東京2020オリンピックSIDE:A/SIDE:B」の総監督は河瀬直美氏が務めた。アスリート以外に焦点を当てた「SIDE:B」は6月24日に上映が始まる (c)2022-International Olympic Committee-All Rights Reserved.
  • 日本外国特派員協会で記者会見する河瀬直美監督
  • 「東京2020オリンピックSIDE:A/SIDE:B」の総監督は河瀬直美氏が務めた。アスリート以外に焦点を当てた「SIDE:B」は6月24日に上映が始まる (c)2022-International Olympic Committee-All Rights Reserved.

聖火リレーのシーンで「100年後の子どもたちに未来を託した」

   河瀬氏の冒頭あいさつによると、映画に込めた思いは「平和」。世界中で困難な状況が続く中で、「この五輪というものが、そういったものを少しでも、光の方向に導くようなものであれたらいい」と話した。重要な場面のひとつである聖火リレーについて、

「(聖火を)運んだ先に私達が今何を見つめるのか、というようなことを、100年後の子どもたちにその未来を託したつもりだ」

とした。

   会見終盤、今回の作品が過去の五輪公式映画といかに違うかを強調する場面があった。制作手法に関する質問がきっかけだ。作品は、さまざまな人物へのインタビューで構成され、その中には聞き手の声も入っている。河瀬氏によると、この声は「後に構成して」入れているものだ。河瀬氏は背景を

「本当に純然たるドキュメンタリーであるかどうかというと、私自身の映画というのは、最初のプライベートドキュメンタリーから、いろんな意味でフィクションの部分がある」

と説明する一方で、

「そのひとつの(撮影対象の)どこを撮るかといえば、それは作家性という意味において、その人の眼差しになってくる。私が撮るのと、是枝(裕和)監督が撮るのとは、全く違う映画になるということだ。同じ現実がそこにあったとしても」

とも述べた。

「『あ、河瀬映画ですね』という風に見ていただいている」

   IOCからは

「(1964年の東京五輪の記録映画を監督した)市川崑の時代に立ち返り、映画がこの人しか撮れない、あなたしか撮れないものであってほしい」

といった依頼を受けたといい、「その依頼を、私は全うできたのではないかなと思っている」とも話した。

   河瀬氏によると、過去20年ほどの五輪公式映画は

「誰が撮ってもそんなに変わらないような、形のある雛形があって、そういうふうな中にエピソードがはまっていく。だから、どこの国でやっていても、そんなに変わらないというような五輪公式映画になっていたと思う」

のに対して、今回の映画は「見た方は『あ、河瀬映画ですね』という風に見ていただいている」。過去の公式映画とは全く異質なものであることを強調し、

「これこそが、私は、自分が3年半かけて、自分のこれまでの映画監督としてのスキルを全部投影して作り上げたものであるという風に、誇りを持って言える」

と述べた。

   「SIDE:B」の上映は6月24日に始まる。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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