NHK党・立花孝志氏、テレビは「編集権でやれる」が... 政見放送どうなる?「これまた違うので」

糖の吸収を抑える、腸の環境を整える富士フイルムのサプリ!

   参院選(2022年6月22日公示、7月10日投開票)では、NHK党の立花孝志党首が展開する「『暴露系』政見放送」への対応に各放送局は苦慮することになりそうだ。

   6月16日夜に放送された党首討論会では、立花氏が発言を遮られて途中退出したり、発言の一部がカットされたりする事態が起きた。立花氏は放送後に公開した動画で「まぁカットされたら仕方ない」とする一方で、「政見放送になってくるとこれまた違うので...」とも話し、番組でカットされた内容も政見放送に盛り込む考えだ。

  • NHK党の立花孝志党首(2017年撮影)
    NHK党の立花孝志党首(2017年撮影)
  • NHK党の立花孝志党首(2017年撮影)

「ユーチューブに誘い込むための作戦でもある。まぁカットされたら仕方ない」

   この日は2番組で党首討論会が放送された。生放送の「報道ステーション」(テレビ朝日系)では、テーマとは無関係の発言を大越健介キャスターに遮られ、立花氏が途中退席。事前収録の「news23」(TBS系)では、物価高について問われて

「物価高に対応する方法、これはもう、政治を抜本的に改革、革命していかなければならないと考えております。今の政治の問題、最も大きな影響があるのが、このテレビによる情報操作と考えております」

などと述べた。ここで画面が一瞬切り替わり、発言が編集されたことが分かる。そして、次の発言が放送された。

「そしてテレビは、この俳優の悪行を調査もせず、なんとこの俳優を主人公とする連続ドラマを放送しようとしているテレビ局があるのです。そしてその俳優の所属事務所社長が官房副長官に直接会っている写真がネット上にあがっています。そのある俳優の名前は言えません。国民のみなさん、権力者はテレビをコントロールしています。テレビは真実を隠蔽します。ぜひユーチューブをご覧ください」

   前後の発言の文脈がつながっておらず、「この俳優の悪行」に関する部分がカットされたとみられる。カットの経緯については、党首討論コーナーの直後に小川彩佳キャスターが

「今の討論の中で、特定の人の名誉を傷つけかねない発言がありましたので、その部分は編集でカットいたしました」

と説明している。立花氏は放送後にユーチューブで公開した動画で、TBSにカットされたとされる発言を紹介。番組の発言について

「ユーチューブに誘い込むための作戦でもある。まぁカットされたら仕方ない」

とする一方で、

「さあ、どうなんでしょうかね、この先。今日のテレビ朝日やTBSは編集権でやれるんですけど、政見放送になってくるとこれまた違うので...。政見放送、どうなるでしょうかね?」

などと述べた。

   政見放送での候補者の発言内容と、それをめぐる放送局の対応の問題は、自民党の高市早苗政調会長が総務相在任時の20年8月、自らのブログで論点を整理している。総務省は放送法と公職選挙法の両方を所管している。

   20年7月投開票の東京都知事選の政見放送では、立候補していた後藤輝樹氏が性的表現を連発したことが波紋を広げた。NHKはそのまま放送し、東京MXは「公職選挙法第150条の2の規定をふまえて音声を一部削除しています」のテロップを入れて、一部の音声を削除して放送した。

   高市氏は、この状況を「放送事業者の対応が分かれたことを見ても、かなり悩まれた上で、それぞれに難しい判断をされたことが想像できます」とみる。

音声削除の根拠になる「公職選挙法第150条の2」とは...?

   放送法の第3条では「放送番組編集の自由」を定める一方で、第4条1項では、編集にあたって「公安及び善良な風俗を害しないこと」「政治的に公平であること」「報道は事実をまげないですること」「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」の4点を求めている。

   一方、公職選挙法では、第150条で「録音し若しくは録画した政見をそのまま放送しなければならない」とうたっており、放送局側で内容を改変したり消去したりすることは原則としてできない。ただし、第150条の2では、政党や候補者に対して次のように求めている。東京MXが音声を削除した根拠として挙げた条文だ。

「他人若しくは他の政党その他の政治団体の名誉を傷つけ若しくは善良な風俗を害し又は特定の商品の広告その他営業に関する宣伝をする等いやしくも政見放送としての品位を損なう言動をしてはならない」

   放送局の対応が訴訟に発展したケースもある。1983年の参院選の政見放送では、故・東郷健氏が身体障害者に対する差別用語を使ったことが問題化。NHKは東郷氏に無断で音声を削除して放送し、東郷氏が損害賠償を求めてNHKを提訴した。1990年の最高裁判決では、第150条の2の規定に違反する言動がそのまま放送される利益は法的に保護された利益とはいえないとして、原告の敗訴が確定している。

   前出の後藤氏は16年の都知事選でも性的発言を連発し、NHKは一部の音声を削除して放送した。後藤氏は東郷氏同様にNHKを提訴したが、やはり敗訴が確定している。

   高市氏は、20年の都知事選で東京MXが音声を削除したのは、こういった判例を踏まえて「自らの判断により対応されたものではないかと考えます」と指摘。行政が政見放送の内容を事前に審査して発表を禁じることは、憲法上禁じられている「検閲」にあたりかねないとして、

「東京MXの判断については、東京都知事選挙の管理執行機関である東京都選挙管理委員会も、『公職選挙法』と『放送法』を所管する総務省も、関与はしていませんでした」

と説明している。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

姉妹サイト