日本政府が2022年6月10月から国外からの観光客の受け入れを解禁するのを前に、岸田文雄首相が5日に福島県郡山市で行われた会合で、外国人観光客が来れば「円安は追い風になる」などと述べた。
「円安を逆手に取った経済対策を行うべき」だとする菅義偉前首相の主張をなぞったようにも見える発言だ。菅氏は官房長官時代からビザ緩和を進めるなどして外国人観光客の増加に力を入れてきた。菅氏は参院選に向けた自民党の演説会にも姿を見せ、入国者数の上限を撤廃し、観光客数を世界で最も多いフランスと同様の水準まで引き上げることを主張している。
「コロナ前」の訪日外国人旅行消費額は4兆8135億円
日本政府観光局(JNTO)の統計によると、19年の訪日外国人数は過去最高の3188万2049人を記録。第2次安倍政権が発足した12年の835万8105人から約2.7倍に増えたが、コロナ禍に突入した21年には24万5862人にまで減少している。菅氏としては、これを「コロナ前」よりも高い水準に引き上げたい考えだ。5月22日に桜木町駅前(横浜市中区)で行った演説では、「円安を逆手に取った経済対策を行うべき」だとして、
「インバウンドがなくなったことによって旅行収支が減少し、2.5兆円の所得を失っている。 水際対策はしっかり行い、大胆なインバウンド政策を私は取るべきだと思う」とも述べている。
観光庁の「訪日外国人消費動向調査」によると、「コロナ前」の19年の訪日外国人旅行消費額は4兆8135億円で、そのうち飲食費・買い物代が2兆7087億円(56.3%)を占める。この点を念頭に置いている可能性もある。
この4兆8135億円を国籍・地域別に見ると、最も多いのが中国の1兆7704億円で36.8%を占め、台湾5517億円(11.5%)、韓国4247億円(8.8%)、香港3525億円(7.3%)、米国3228億円(6.7%)が続いている。