マナーの本質は「相手の立場に立つこと」
マナー講師への厳しい風当たりは、どうすれば改善されるのだろうか。西出さんは、マナー講師側に求められることがある、と話す。
「マナーを教わる皆さんの中には、マナー講師の『言い方』や『伝え方』にカチンと来たり、傷ついてしまうという方もいらっしゃいます。そういう時には、『こうしなければならない』と言い切るのではなく、『こうした方が喜ぶ人が多いですよね』と言い方を変えることも必要なのではないでしょうか。また、講師から一方的にマナーの型を押し付けられても『なぜマナーを守るのか』が分からなければ、ストレスは溜まる一方です。『なぜ』の部分をマナー講師側がしっかりと伝えていくことで、受け取る皆さんの考え方、マナー講師に対するイメージが変わっていくんじゃないかなと期待しています」
西出さん曰く、マナーの本質は「相手の立場に立つこと」だという。「日本ではよく『マナーを守る』と言われますが、マナーは守るものではなく、自分を守ってくれるものなのです。幕末の儒学者・佐藤一斎の本『言志四録』の中にも『礼儀を甲冑せよ』という意味合いの言葉が出てきます。マナー、すなわち礼儀を鎧として身につけることで、自分を守ってくれるという意味です。相手の立場に立ち、相手を不快にさせないような言動をすることで、自分が守られるのです」
また、西出さんは「マナーは相手や場所、ケースに応じて変わるもの」だとし、「型」ではなく「心」が重要だと指摘する。「マナー講師の中には『まずは型を身につけなさい。気持ちは後からつけましょう』と指導している人がいるのも現実です。考え方は人それぞれですが、私としては『型』よりも相手を思う心が先でしょ?ということを伝えています」
そして、西出さんはマナー講師を起用するメディアにこう問いかける。
「貴重な情報を発信くださるメディアの存在には感謝しています。その上であえてお伝えするならば、こちらが伝えたことを編集でカットされて、メディア的に美味しいところだけが取り上げられて、それが視聴者に誤解を与えて炎上してしまうというケースがあります。マナー講師にそのテーマを担うよう依頼してくるのであれば、ここはメディアとマナー講師の間の『マナー』だと思うんですね。マナーをテーマとして取り上げて、社会をどうしたいのか?堅苦しいと思われているマナーを楽しく伝えることには賛成です。しかし、ただ面白おかしく伝えるだけ?数字を取るためだけですか?と問いたいです。そうではなくて、もっとその先の、人間関係や社会を良くするためのマナーを伝えてほしいというのが、私の率直な願いです。メディアは影響力のある存在なのですから」
(J-CASTニュース記者 佐藤庄之介)