労働は過酷だったが、船内の雰囲気はとても良かった
齊藤氏は2000年に北里大学水産学部を卒業後、バイオ系企業に就職し、研究所に配属された。そんな齊藤氏は2001年に「魚介類の鮮度を保持する保存剤の開発に役立つから」との上司からの業務命令を受け、マグロ漁船に43日間にわたって乗船。マグロ漁船の実態を目の当たりにしたというが、そこで見たのは、流布している「都市伝説」とは全く違うマグロ漁船の実像だったという。
「私がマグロ漁船に乗ったのは2001年6月下旬から8月上旬で、大分県に船籍があるマグロ漁船だったのですが、いざ、乗ってみると、やはり、労働環境は過酷でした。しかし、その一方で、9人乗りの船内の雰囲気は大変良く、全員が協力して日々の業務を行っていました」
次に、1日の仕事の流れやその内容について聞いた。
「仕事は朝6時から開始。私が乗船したのは、はえ縄漁の船でしたので、漁場につくと、まず、縄を漁場に垂らします。その長さは100kmでしたので、長さに例えると、東京から富士山のあたりまでの長さとなります。それが終わるのは正午です。
そこから3時間はマグロが餌にかかるのを待つ時間であり、同時に昼寝の時間です。そして、15時から引き上げの作業は平均的には12時間後まで続き、終了は翌日の3時。そして、次の日の仕事は3時間後の朝6時からです。私が乗った船をはじめ、遠洋マグロ漁船では、基本的にこの行程を20日連続で繰り返しますが、場合によっては、必ず連続で行われない場合もあります」
「なお、私が乗ったマグロ漁船は漁場が赤道付近でしたので、日本を出て漁場まで移動し、また戻ってくるまで計43日乗船しました。内訳は漁場まで出漁するのにに約10日、漁場での漁に約20日、帰港に約10日というものです。なお、漁場にいる間ですが、よりマグロがいると思われる場所へ移動する日は完全な休日となります。一方、行き帰りの移動の際は完全な休日というわけではなく、船内では釣り針を磨くといった作業が行われます」