日本赤軍の元幹部らが久々に公の場に姿を現したことが一部で温かく受け止められているとして、イスラエルのギラッド・コーヘン駐日大使が2022年5月31日、ツイッターで「愕然としました」と憤った。
5月28日に重信房子元最高幹部(76)が20年にわたる服役を終えて出所し、30日に岡本公三容疑者(74)が逃亡先のレバノンで開かれた集会に姿を見せたことへの反応だ。5月30日は、1972年にイスラエル・テルアビブのロッド空港(現ベングリオン空港)で起きた乱射事件から丸50年にあたる節目の日だ。岡本容疑者は実行犯のひとりで、コーヘン氏は「理性ある人なら、26人の罪のない民間人の殺害に関与した人々への支援を表明し、祝福することはできないはず」だと訴えた。
パレスチナ側、重信元最高幹部は「生涯の同志」
コーヘン氏のツイートでは、重信元最高幹部や岡本容疑者の動向を伝えるツイートを貼り付け、
「1972年にロッド空港で発生した乱射事件から50年を記念する集会に参加した岡本公三容疑者、および先週末出所した重信房子元最高幹部が温かく迎えられる姿を見て愕然としました」
と書き込んだ。貼り付けられたツイートのひとつが「パレスチナ青年運動」(PYM)のものだ。そこでは「重信房子がついに自由の身に」とうたい、重信元最高幹部を「日本の自由の戦士」で「パレスチナ人と闘争の生涯の同志」だとたたえている。
コーヘン氏は、乱射事件の現場写真つきで
「理性ある人なら、26人の罪のない民間人の殺害に関与した人々への支援を表明し、祝福することはできないはずです。そしてそれは、事件から50年が経過した現在でも同様です」
とも書き込んだ。
岡本容疑者出席の集会は「テロ組織のメンバーであり、罪なき命を奪った4人の日本人を記念」
さらに、イスラエルの国会議員が、第二次世界大戦時にユダヤ人難民を救った日本人に感謝状を贈ったエピソードと、岡本容疑者が出席した集会が「パレスチナのテロ組織のメンバーであり、罪なき命を奪った4人の日本人を記念して開催」されたことを対比しながら、次のように主張した。
「もしもどういった道徳的価値観を重視すべきか迷うときには、どちらの側が平和を重んじて命を救う行為を敬い、どちらの側が戦争と暴力、そして命を奪う行為を敬うのかを思い出してください」
国内の一部には、コーヘン氏と問題意識を共有する論調もある。例えば産経新聞は5月31日付紙面の社説にあたる「主張」の欄で、「彼女はヒロインではない」の見出しで重信元最高幹部の出所を取り上げている。そこでは、
「いわゆる全共闘世代には郷愁を誘われる存在なのだろう。出所を扱う多くのニュースが『時代の象徴の生還』といった趣で報じた」
と指摘しながら
「彼女は決して時代のヒロインではない。改めて彼女が率いたテロリスト集団による、血塗られた凄惨な歴史を記憶すべきである」
と断じている。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)
1/ 1972年にロッド空港で発生した乱射事件から50年を記念する集会に参加した岡本公三容疑者、および先週末出所した重信房子元最高幹部が温かく迎えられる姿を見て愕然としました。>>>
— Gilad Cohen ???????? (@GiladCohen_) May 31, 2022
???????? pic.twitter.com/UCfiwXei2W