SKE48の須田亜香里さん(30)が2022年5月30日に本拠地のSKE48劇場(名古屋市中区)で行われた劇場公演で、グループからの卒業を発表した。須田さんはSKE48では最年長で、AKB48グループとしても柏木由紀さん(30)に次ぐ年長メンバー。グループ以外での活動も増え、卒業は秒読みだとみられていた。
J-CASTニュースでは、SKE48の後輩メンバーが同席したものを含めると、須田さんに4回にわたってインタビューしている。そこでは卒業への思いや、卒業後の方向性について繰り返し語っていた。
劇場公演では後列の隅、握手会で頭角現す
須田さんは劇場公演のあいさつで、卒業を決めた理由を、「アイドル・須田亜香里」では味わい尽くせなかった人生を「人間・須田亜香里」として味わい尽くすためだと説明。卒業は「すごく怖かった」一方で、「まだ見ていない景色とか可能性を目の前に置いておいて、それを怖がっている自分は違う」として、新たな一歩を踏み出すことにした。「アイドル活動をいろんな人に還元していけるようになれたらいい」とも話した。
須田さんは09年に3期生としてSKE48に加入。劇場公演のポジションは後列の隅が続き、当初は「推され」ていたわけではなった。だが、握手会での「神対応」で頭角を現し、13年のAKB48グループの選抜総選挙で16位にランクイン。指原莉乃さん(29=19年卒業)がセンターを務めた「恋するフォーチュンクッキー」のオリジナルメンバーの座を射止めた。16年は7位に順位を上げ、初めて「神セブン」入り。18年には松井珠理奈さん(25=21年卒業)に次ぐ2位にまで上り詰めた。SKE48の26枚目のシングル「ソーユートコあるよね?」(20年1月発売)では、初めてセンターポジションに起用された。
SKE48としての活動以外にも、中日新聞でコラム「てくてく歩いてく」を連載しているほか、情報番組「ドデスカ!」(メ~テレ)のコメンテーター、ラジオ番組のレギュラー出演など活躍の幅を広げていた。
選抜総選挙は、須田さんにとって力の源泉になっていた節もうかがえる。須田さんは20年1月のインタビューで、「私は総選挙があったからここまで来られました」と話し、客観的な指標で評価されることに意義があったことを指摘している。
「握手会の列が長いのにどうしてステージの立ち位置は隅なんだろうと思っていた時に、数字で『何票で何位』という誰も動かせない結果として出ると、自分が必要だとされているという自信になりました」
ただ、仮に総選挙が復活したとしても「今の私で、あの投票条件で見られる景色は現状見尽くしたなと思っています」と出馬には否定的。2位にランクインしたことで、須田さんのキャリアにとっての役割を事実上終えたとみていたようだ。
「AKB選抜」への参加なくなって「方法は変えようと思っています」
選抜総選挙の効用のひとつが、上位にランクインすることで、姉妹グループメンバーもAKB48の楽曲に参加し、テレビなどでの露出が増えることだ。総選挙後の楽曲以外でも、姉妹グループメンバーがAKB48の選抜メンバーとして参加する慣行が長く続いてきた。須田さんは、この恩恵を最大限受けてきた姉妹グループメンバーのひとりで、「LOVE TRIP」(16年発売)から12作連続、「恋するフォーチュンクッキー」(13年発売)から通算18作品にわたってAKB48のシングル表題曲に参加してきた。
ただ、「根も葉もRumor」(21年9月発売)にはAKB48メンバーのみが参加し、約10年にわたって続いた慣行が崩れた。須田さんにとっては逆風とも言える変化について、21年8月のインタビューで率直な思いを語っていた。
「どうでしょうね...。ひとつでも出られる場は多い方がいいので、やっぱり減ってしまうっていう部分では、惜しいのかな...。やっぱり、AKB48の名前だからこそ立てた場所は実際あったと思いますし、(音楽番組の)特番でも、『AKB48グループから1組』となればAKB48しか出られなかったりします。AKB48グループ自体が盛り上がれば、SKE48ももっと見てもらえるって思ってAKB48の場でも頑張ってきましたが、そのやり方がかなわなくなったとは思っています」
その上で、SKE48としての魅力を増すことを語っていた。
「方法は変えようと思っています。AKB48グループは、グループごとに所属会社が変わったので、個々に活動することが増えていく分、SKE48はSKE48で大きくなって話題になれば、きっと『AKB48グループから1組』となったときに『SKE48で』となる日も、別にないわけではないと思います。なので、それは素直に狙ってもいいのかなって思います。以前は、SKE48である以上に『AKB48グループの一員だから』という気持ちでいましたが、今はSKE48はSKE48で攻めていけばいいじゃないか、とシンプルにSKE48に染まることができます。もちろん、(AKB48グループの一員としてテレビなどに)出られるに越したことはありませんが、今の状況をポジティブに、強みにして、攻めていけたらいいと思っています」
卒業は「いろいろなことが円滑になってから」「もう何も後悔なく辞めたい」
卒業に向けた発言も、少しずつ具体的になっていった。20年1月時点では、卒業時期について
「心と体が元気で心からの笑顔をファンの方に見せられる範囲でアイドルをやります!」
と述べるにとどめていたが、「卒業後」のイメージも明かしていた。
「どうだろうなー。生きていれば何でもいいんですよね。私は本当に『こうなりたい』という執着がなくて...、だから『こうなりたい』というよりは、やりたいことを一つずつやって生きていきたいので、辞めたらとりあえず休みを取って、バックパッカーしたいなー。芸能界で何かしたいことと言えば...、あっ、スキャンダルを起こしたい(笑)。私、本当に薄っぺらいんですよ」
テレビ番組の出演については、わらしべ長者を例に引きながら「ご縁」を強調した。
「どれも、関わるスタッフさんとかとのご縁だけでやってきたので、ご縁次第、という感じですね。人に支えられて生きている人間なので、わらしべ長者みたいな感じですよね。出会っていく人とどんな思いを交換し合ってどこに行きつくか」
21年8月のインタビューでは、卒業が現実味を増し「いろいろなことが円滑になってから」。「もう何も後悔なく辞めたい」とも話し、卒業コンサートなどに向けた環境整備が前提になるとの考えだった。
「欲を言えば握手会もしたいです。ライブも(今は禁止されている)みんなのコールが聞きたいな、というのもあります」
「ぐちゃぐちゃになっている『30歳リアル』」、半年後の名古屋ソロライブでは...
30歳になった直後の21年11月に東京・渋谷で開いたソロライブでは、自らの年齢と卒業との葛藤を
「私の中で『けじめとなる日』を意識しながら準備をしてきた分、だから余計泣いちゃったんだろうね、きっと。『卒業しなきゃ』という思いと、『できないな』という思いと、ぐちゃぐちゃになっている『30歳リアル』です」
などと語っていた。22年1月には地元・名古屋でのソロライブが予定されていたが、須田さんが新型コロナに感染したことで中止に。3月のインタビューでは、「このまま終わると、もしかしたらちょっと寂しい思いをするファンの方も多いと思うので、またできるように頑張れたら」と思いを語っていた。
その後、名古屋でのソロライブは5月20日に延期開催が実現。ここでも、
「アイドルって何となく『30歳まで』っていうイメージがあったから、30歳じゃなくなる自分がずっと不安だったりとか迷ったり悩んだりとかしてきたんですけど...」
などと涙ぐみながら自らの葛藤に改めて言及したが、ギターの腕前の上達もあって、大半は笑顔でパフォーマンスを披露。吹っ切れた様子で
「私って本当にいつまでたっても未完成で...でも、未完成だからこそみんなが見守っててくれるから、自分の人生は嫌いじゃないです」
と笑顔を見せていた。
須田さんは9月24日に日本ガイシホール(名古屋市南区)で卒業コンサートを開き、9月末にグループを離れる。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)