1冊窃盗で「30~50冊売らなくてはならない」 書店「万引き警告」切実ポスターが話題...運営に聞く掲示理由

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   「1冊の窃盗被害を埋めるためには、同じ本を30~50冊売らなくてはなりません」。とある書店に掲示された、万引きに対して警告するポスターの一文がツイッターで話題となっている。

   J-CASTニュースは、なぜこのポスターを掲示したのか、この一文がどのような計算に基づいているのかについて、制作したブックエース(水戸市)に取材した。

  • ブックエースの店舗に貼られているポスター(写真提供:同社広報)
    ブックエースの店舗に貼られているポスター(写真提供:同社広報)
  • ブックエースの店舗に貼られているポスター(写真提供:同社広報)
    ブックエースの店舗に貼られているポスター(写真提供:同社広報)
  • ブックエースの店舗に貼られているポスター(写真提供:同社広報)
  • ブックエースの店舗に貼られているポスター(写真提供:同社広報)

「地域書店の存続と働く私達の生活を脅かしています」

   「万引きはやめてください」と題したポスターには「1冊の窃盗被害を埋めるためには、同じ本を30~50冊売らなくてはなりません」と書かれており、「万引きによる窃盗被害は、地域書店の存続と働く私達の生活を脅かしています」と続く。

   「万引きは、刑法第235条により、10年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金が科せられます」といい、「被害弁償の他、対処に要した人件費等も請求します」と警告している。

   このポスターは2022年5月26日、ツイッター上で投稿があり注目を集めた。「書店は大変だ」「本が好きだから余計に許せない」といった共感の声が上がる一方で、「本の粗利って2~3%程度なんですか?」「本ってそんな原価率高いの?」といった疑問の声も上がるなど話題を呼んだ。

   このポスターを制作し、運営する書店に掲示しているブックエースの広報は31日、J-CASTニュースの取材に対し、1冊の本の利益配分について次のように答えた。

「一般的に、一冊の本の利益構造は、原価に加え人件費や水道光熱費、決済手数料(クレジットカード、電子マネーなど)、家賃、その他運営費など様々な販売管理費がかかり、それを差し引いたときに残る利益はおおよそ5%となります。現在、当社はTSUTAYAのFC本部と共に書店が持続可能な事業になるように、利益改善に取り組んでおりますが、上記に加えて本社コストなどを差し引くと利益率は約2%となります。他の小売の方々も同様ですがその1%~2%のために日々努力しています」

「社会全体の万引き撲滅に繋がるキッカケになると嬉しい」

   この利益配分に基づいて、今回話題となっている一文について計算すると、「手元の利益が2%と仮定すると万引きによって商品を失った場合、取り戻すためには50倍の売り上げが必要」になるといい、利益率の幅によって30~50冊になるという。

   同社は「書籍販売だけでも、過去年間で4000~5000万円の損失」があるという。ポスター制作に至った経緯については、「2020年の4月より万引き対策のプロジェクトを立ち上げ、万引き犯には商品代金だけではなく、人件費や被害届の提出にかかる費用などを含む損害賠償請求を行うことを決め、そのことを店内でも周知するためポスターを制作いたしました」と答えた。同社が運営するブックエースや川又書店全店計24店舗に、2021年1月から掲示しているという。

   強い言葉遣いで万引き行為を注意するポスターを作らなかった理由としては「お客様全体の1%にも満たない万引き犯への呼びかけがそのほかの99%のお客様に不快な思いを持たせてしまうことが気がかりでした」とし、「来店される皆様にもご理解頂けるようなメッセージに変更しました。書店員の生活は、本の販売から得られる利益で成り立っており、万引き犯の良心に語り掛け、少しでも理解してもらいたいという思いでこのような内容といたしました」と説明した。

   今回のポスターが話題を呼んでいることについては「これを機会に、書店のみならず、社会全体の万引き撲滅に繋がるキッカケになると嬉しいです」と答えている。

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