広告で訴求するための"やらせ調査"が広まっている問題で、市場調査会社の業界団体「日本マーケティング・リサーチ協会」(JMRA)が2022年5月31日までにガイドラインを公表した。
調査データの開示指針などを盛り込み、事業者に透明性向上を求めている。
結果ありきの調査に「強く抗議をする」
JMRAは22年1月、「非公正な『No.1 調査』への抗議状」と題した声明をウェブサイトで公表し、大きな注目を集めた。
「お客様満足度第一位」「おかげさまで人気NO.1」などNo.1を獲るための恣意的な調査が横行し、悪質業者に対し「No.1を謳うために結果ありきの調査を誘導する姿勢に強く抗議をする」と非難していた(詳報:「No.1商法」に業界団体が抗議状 市場調査でやらせ横行...「社会的信頼を損なう」「看過できない」危機感あらわ)。
JMRAが策定したガイドラインでは、商品・サービスの比較広告において、根拠として公表するのが望ましい調査項目などを挙げている。具体的には次の通り。
(1)調査設計の詳細:(必須)対象母集団及び商品・サービス等の定義、調査方法、調査地域、サンプリング方法(割り付けの有無を含む)、設計サンプル数及び回収数、調査期間・時点。(必要に応じて)督促または追加サンプル、選択肢のランダマイズ、ウエイト付け、多変量解析の有無など、一般に調査報告書の「調査概要」の特記事項に含まれるもの。
(2)質問文及び選択肢の詳細(対象を絞り込む設計の場合には、その前段となる質問文を含む)
(3)質問した商品・サービスに関するデータのすべてを開示することが望ましいが、他社データの開示に支障がある場合には、そのブランド名等をマスキング表示(他社商品 A, B, C ・・・などと)することは許される。
検証委員会の設立も検討
消費者庁は、景品表示法上、不当表示とならないためには(1)比較広告で主張する内容が客観的に実証されていること(2)実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用すること(3)比較の方法が公正であること――をすべて満たす必要があるとしている。
しかし、公正な調査方法を一律に規定するのは難しく、JMRAは「表示の根拠となる調査の概要をできるかぎり詳細に開示し、一般消費者自身に当該調査が公正な調査であるか判断する機会を与えることこそが、一般消費者を不当なNo.1表示から保護し、市場調査に対する社会的信頼を維持することにつながる」としている。調査の留意事項は、別途「手引き」として公開している。
調査概要の開示をめぐっては、プレスリリース配信大手のPR会社「PR TIMES」も5月中旬、調査リリースの掲載基準引き上げを発表し、「調査期間」に加え、「調査機関」「調査対象」「有効回答数(サンプル数)」「調査方法」の明記を必須としていた(詳報:「No.1広告」制限へ...プレスリリース大手PR TIMESが決断 「やらせ横行」で業界団体も危機感)。
JMRAは併せて、「広告表示問題専門委員会(仮称)」の設立も検討すると発表した。消費者などからの要請に応じ、問題があれば検証作業を担うとする。
(J-CASTニュース編集部 谷本陵)