「原価率」めぐる議論はなぜ噛み合わないのか 拡散ツイートから探るその理由

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   ツイートまとめサービスTogetter(トゥギャッター)を運営しているスタッフがTwitterで注目された話題を厳選し、考察するコラムの第52回をお送りします。今回のテーマは「原価と販売価格の話がバズるワケ」です。

   モノやサービスの価格は、原材料費だけでなく、技術料や手間賃、諸経費を合わせた額で決まります。しかし、その価格設定が妥当なのかどうかは消費者には判断しにくいもの。そういったギャップにTwitterで注目されやすくなる理由がありそうです。

Togetter社が解説する「3分くらいで分かる週刊Twitterトレンド」<出張版>

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「棺桶の原価は7000円程度なのに...」

   先日、「棺桶の原価は7000円程度なのに、葬儀屋からの請求は10万円前後と聞いた」というツイートが拡散しました。

   これに対し、創業89年の葬儀社「佐藤葬儀」の代表であり「葬祭系YouTuber」としても活動する佐藤信顕さんが説明。安い棺桶は底が抜けてしまうなど品質に問題があるため、2万円ほどのモノが使われていることや、納棺に立ち会う人件費や配送料の話にも触れています。

<「棺桶の原価は7000円だけど葬儀屋の請求は10万らしい」という噂に対する葬儀屋さんの解説 - Togetter>

   10万円の正確な内訳は不明ではありますが、こうした説明を聞けば請求額にも納得できるのではないでしょうか。

   同じような話で、農業に携わっている人が「無農薬栽培の野菜は農薬を使っていないからそのぶん安くできるでしょ?」と言われたというエピソードが注目されたこともありました。

   無農薬栽培は農薬を使わないかわりに、病害虫防除の手間や草取りなど特別な技術と手間暇をかけて栽培されているもの。さらに天候などの影響による減収リスクを低減させる必要もあり、消費者側からはわかりにくい部分で見えない手間暇がかかっているのです。

<「無農薬栽培の野菜は農薬を使っていない分農薬代が節約できているのだから安くできるでしょ?」という物言いから『目に見えないコスト』の重要さを再確認する - Togetter>

販売価格の裏にある「見えない手間暇」

   こうしたツイートがバズるたび、それぞれの分野に詳しい人たちが「設定している価格には手間や工程によるコストが含まれていることに気づいて欲しい」と訴えるというパターンが繰り返し観測されています。

   漫画やイラストといった創作物の分野も同様です。デジタル作画に関して、実際には細かい作業が膨大にあり手間も技術も必要なのに「デジタルツールなら早く簡単にイラストが描ける」と思っている人がいるという話が拡散した時は、「低価格で絵を描いて」と言ってくる人はこういう認識かもしれないという意見に大きな共感が集まっていました。

<「パソコンの絵なんて自動計算でぱぱっと仕上がるんちゃうん!?」と言われた話。「100円で絵描いて」とかいう人の正体はこれかもしれない - Togetter>

   また、イラストレーターの岸田メルさんが、相手側の理解不足から無茶な依頼をされたことに関連して「ギャラには描く労力だけでなく作品を使って商売をする権利分も含まれてることを理解していてほしい」とツイートしたことも。

   それを見たユーザーがイラストの代金に含まれる「制作料」「使用料」「著作権料」について解説するなど、価格についての知識が広がるようなアクションも起きています。

<岸田メルさん「イラストのギャラには描く労力以外にそれを使って商売する権利分も含まれてる事は最低限分かってほしい」 - Togetter>

   料理やハンドメイド作品についても同様のことが言えます。「価格が高い」と感じるものも多いですが、自分がやってみると再現が難しく「クオリティが高いものを生み出すには技術や知識、経験、それに伴う膨大な時間がかかっている」ことを知れば、原材料費と販売価格の関係も理解できるでしょう。

<値段が高いと思ったら1回自分で作ってみるといい。「あ、安いわ」って感じるようになるから 手間と対価の関係を考える話に共感集まる - Togetter>

原価の話がポジティブな行動につながることも

   こういった話がTwitterで何度もバズって販売価格への理解が深まってきたのか、最近では事情を知ってポジティブな行動に発展したエピソードも出てきています。

   あるユーザーは、ショートケーキなどの洋生菓子は原材料費の比率が高く、売れ残れば廃棄となるため、ケーキ屋さんは日持ちのする焼き菓子を並行して販売していかなければ利益が出にくいという話を聞いたとして、焼き菓子を意識的に買うようになった、と呟きました。

   価格の背景を知ることで、値段が高い・安いと不満をこぼすだけで終わらない傾向も見られるようになってきたようです。

<ケーキ屋さんが『洋生菓子は原価が高く、売れ残るとすぐ廃棄。我々は焼き菓子でしか粗利を稼げない』と言うのでこれからは焼き菓子も併せて買いたい - Togetter>

   Twitterで注目されやすい「原価と販売価格の話」とその反応について整理すると、次の3つとなります。

・販売価格には原材料費や仕入れ値以外に手間賃や諸経費が含まれていることが忘れられがち
・Twitterでは消費者側に伝わっていない事情を業者や専門家が説明することがある
・販売する側の事情を知り、ポジティブな行動に変わる傾向も出てきている

   販売価格はシビアに判断されがちですが、生産者や販売者の高い技術に見合ったもの、あるいは企業の経営努力による設定であることは、頭の片隅に置いておいてもいいのではないでしょうか。

   以上、Togetterがお送りする「3分くらいで分かる週刊Twitterトレンド出張版」でした。次回もお楽しみに。

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