アダルトビデオ(AV)出演者が無条件に契約を解除できることなどを定めた「AV出演被害防止・救済法案」をめぐり、立憲民主党議員の発言が波紋を呼んでいる。
2022年5月25日の衆院内閣委員会での発言が報じられると、立憲が「性行為を伴うAV禁止法案」にも意欲的と受け止められ、是非をめぐり議論となっている。
「立憲民主党としてAVなどにおけるあらゆる性的搾取を根絶する」
超党派の議員がまとめた「AV出演被害防止・救済法案」が衆院内閣委員会で可決され、今国会で成立する見通しだ。
注目を集めたのは、25日の衆院内閣委員会での堤かなめ、森山浩行両氏(いずれも立憲)のやりとり。
堤氏は法案について質問を重ねたのち、「性行為を伴うAVの禁止については、立憲民主党としてこの法律とは別途検討を続けることが可能であると考えますがいかがでしょう」と切り出した。
森山氏は「検討を続けることを何ら妨げるものではございません」と同意し、「立憲民主党として、本法が成立した後も、性行為を伴うAV自体の禁止について支援団体の方々とともに議論をしながら検討を続けることはもちろん可能であります」と答弁した。
堤氏は「映画やテレビで殺人のシーンがあったとしても、それはあくまで演技であって撮影の際に人を殺すことはありません。しかしながら、性交については演技でなく実際に撮影現場で行われることもあると聞いております。この場合、妊娠や性感染症、うつやPTSDなどの危険性がございます。また、撮影現場で暴行、凌辱行為など個人の尊厳や人権、とりわけ若者や女性の尊厳や人権を踏みにじる行為が行われた場合、心身の安全や健康への影響を及ぼすことになりかねません」と検討の必要性を訴え、
「人間の尊厳と人権の尊重という観点から、立憲民主党としてAVなどにおけるあらゆる性的搾取を根絶するため、今後も全力で取り組むことをお誓い申し上げて質問を終えます」
と締めた。
「性行為そのものの忌避は危うさ感じる」
神奈川新聞社のニュースサイト「カナコロ」が「性行為伴うAV禁止の法制定を別途検討 立憲民主党が方針」と質疑応答の模様を報じると大きな注目を集め、関連ワードがツイッターのトレンド1位になった。
立憲がAVの契約面に加えて制作物の内容への法整備にも前向きと受け止められ、SNSでは異論が噴出した。表現規制の観点から懸念も漏れた。
日本維新の会の音喜多駿参院議員は「立憲民主党およびその一部支援者・支援団体の方が傾倒されている『性行為』や『セックスワーク』そのものを忌避されるような主張・論理には非常に危うさを感じる」とブログで疑問視した。
「AV出演被害防止・救済法案」の必要性を唱えてきた、立憲の塩村文夏参院議員は「様々な意見があってもいいとは思いますが、いまその仕事に就いている方の差別につながるような一方的な禁止論や、憲法や立法事実との兼ね合いを考えれば、簡単に結論や方針が出る話ではありません」とツイッターで慎重な見方を示した。
続けて「党か本人がきちんと説明をすべきだと思いますが」と前置きし、「炎上している『本番AV禁止法』は、今回の『被害救済法』とは関係のないものです!立憲が禁止法を提出する様な話が出回っていますが、(中略)大きく本件の社会情勢が変わらない限り、大変に難しいです」とも呼びかける。
「『表現の自由界隈』から槍玉に」
一連の見解は個人のものであり、党を代表していないとの指摘もある。米山隆一衆院議員は、立憲のスタンスは塩村氏の説明の通りで「ミスリーディングな報道のせいもあって『本番AV禁止法』について立憲が『表現の自由界隈』から槍玉にあげられています」などと持論を述べた。
一方、塩村氏は「主語が『立憲民主党として』に双方なっており、立憲が禁止法を提出する前提にとられても仕方なかった。でも、本当に決まってないです!」と理解を求めている。
日本共産党ジェンダー平等委員会責任者の倉林明子参院議員は25日、「日本共産党は、実際の性交を禁止する項目を入れるなど、より抜本的なAV被害防止に向けて、強く主張しつつ、現に生じているAV被害の救済を図るために法案に賛成しました(中略)対価を払って実際に性交させることは個人の尊厳を傷つけるものであり、こうしたAV撮影は禁止されるべきです。実際の性交を伴うAVについて正面から規制する法整備を進めることが緊急に求められます」などとする談話を発表した。