感染爆発なのに密状態 北朝鮮がコロナ対策よりも「豪華国葬」を優先した事情とは

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   新型コロナウイルスの感染が拡大する北朝鮮で、軍重鎮の国葬が2022年5月22日に行われた。多数の軍人が参列し、国営メディアが配信した写真を見る限りでは「密」の状態が起きているようにも見える。葬列の沿道には多くの住民が動員された。

   新型コロナに感染している可能性がある「発熱患者」の数は、累計で人口の1割程度に達するとされる。死去した人物が、「密」のリスクを取ってでも盛大に国葬を行う必要がある「大物」だったことに加え、国家行事を引き続き行う能力が残っていることをアピールする狙いもあるとみられる。

  • 多くの軍人が玄哲海(ヒョン・チョルヘ)氏の出棺を見送った(写真は朝鮮中央テレビから)
    多くの軍人が玄哲海(ヒョン・チョルヘ)氏の出棺を見送った(写真は朝鮮中央テレビから)
  • 玄哲海氏の葬列には多くの軍人が動員された(写真は朝鮮中央テレビから)
    玄哲海氏の葬列には多くの軍人が動員された(写真は朝鮮中央テレビから)
  • 多くの軍人が玄哲海(ヒョン・チョルヘ)氏の出棺を見送った(写真は朝鮮中央テレビから)
  • 玄哲海氏の葬列には多くの軍人が動員された(写真は朝鮮中央テレビから)

公表されるのは「感染者」や「陽性者」ではなく「発熱患者」数

   新型コロナをめぐる国営メディアの報道では、「感染者」や「陽性者」ではなく「発熱患者」の数が公表される。PCR検査や抗原検査の体制が整っていないため、便宜的に「発熱患者」を感染者に準じる形でカウントしているとみられる。5月21日18時から24時間の間に、新たに16万7650人の発熱患者が発生。4月末からの累計では281万4380人で、8割超の233万4910人が全快したとしている。累計の死者は68人。北朝鮮の人口は約2600万人で、約1割が感染した可能性がある。

   そんな中で行われたのが、国防省総顧問で朝鮮人民軍元帥の玄哲海(ヒョン・チョルヘ)氏の国葬だ。玄氏は5月19日、多臓器不全で死去。87歳だった。国営メディアによると、玄氏は「金日成主席の忠実な銃剣戦士であり、金正日総書記と敬愛する金正恩総書記の忠実な革命戦友」。朝鮮戦争(1950~53年)では、金日成氏を「決死擁護するための聖なる闘い」で「無比の英雄性と犠牲的精神を遺憾なく発揮」したと伝えている。食糧難で餓死者も相次いだ1990年代後半の「苦難の行軍」では、「金正日総書記の先軍革命指導を最も身近で補佐」したとしている。「金正恩総書記の唯一的用兵体系が全軍に確固と根を下ろすようにした」とも紹介している。

正恩氏の「軍事教育を担当」、弔問では拭う場面も

   金一族の3代にわたって仕えた人物で、この間、国防省の前身にあたる人民武力部第1副部長兼後方総局長や、最高人民会議(国会)代議員などを歴任した。

   聯合ニュースが13年に伝えたところによると、玄氏は「朝鮮労働党で政治局委員、中央委委員、中央軍事委委員などを歴任した軍の中心人物」で、金正日体制で「正恩氏の軍事教育を担当していたとされる」と指摘している。

   5月20日の弔問では、金正恩総書記は終始悲痛な表情で、退出時には涙を拭う場面もあった。22日の国葬では、「最も尊敬していた革命の先輩であり、わが軍の元老であった堅実な革命家を失った大きな喪失の痛みを禁じ得ず」、出棺で自らひつぎを担ぐほどだった。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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