プロ・アマチュアを問わず、個人が趣味で制作した本を売買するイベント「同人誌即売会」。
同人活動を経て商業作家となった人も多いため、同人誌即売会は日本の漫画文化を支える存在の1つとなっている、との見方をされることもある。しかし多くの同人誌即売会は、コロナ禍によって存続の危機にさらされている。
こうした状況を鑑みて2022年5月19日、参議院議員会館の会議室で同人誌即売会の現状報告会が開かれた。関係者が課題を共有し、連携して対応に取り組める体制を構築することを目的としている。藤末健三参院議員(自民党・国民の声会派)が主催し、同人誌即売会の関係者、政府関係者、東京都議会議員ら約30人が参加した。
同人誌即売会は今、どんな状況にあるのか。現場で取材したJ-CASTニュース記者がレポートする。
日本最大級の同人誌即売会の現在
政治家からは主催の藤末氏のほか、都議会議員の鈴木晶雅氏と大田区議会議員の荻野稔氏も参加した。多数の同人関係者と行政関係者らが集うのは、21年8月20日に開催された「東京ビッグサイトにおける同人誌即売会の開催に向けた関係者ラウンドテーブル」以来2回目だ。21年冬のコミックマーケットや、ゴールデンウィーク期間中に開催された同人誌即売会の現状や課題の報告が行われた。
コミックマーケット準備会の安田かほる共同代表は、コロナ禍における参加者の安全を第一に考えた人数で実施したとし、次のように報告した。
政府の技術実証実験の一環で「ワクチン・検査パッケージ」を実施するため、68レーンを設置し検温やワクチン接種証明や入場証の確認を行った。一人当たりの確認時間は約20秒で、参加者アンケートでは「思ったよりかなり早かった」と振り返る声が寄せられたという。さらに、イベントを続けることができたのは関係省庁、自治体との関係を構築できたことが有効だったと振り返る。21年のラウンドテーブルの開催に協力した藤末氏や、関係省庁とのミーティングを準備した山田太郎参院議員らに感謝した。
日本最大級の同人誌即売会に挙げられる「HARU COMIC CITY(春コミ)」や「SUPER COMIC CITY(スパコミ)」を開催する赤ブーブー通信社(有限会社ケイ・コーポレーション)の赤桐弦代表は、次のように話す。
コロナ禍によって、一時はサークル参加者(出展者)がコロナ前の25%ほどに落ち込んだ。現在は「かなりゆっくりのペース」で回復傾向にあるものの、10代から20代後半の参加者が激減。開催するデジタルイベントの参加者は、リアルイベントよりも高い年齢層となっており、赤桐代表は「オンラインで代替できるのは予算と社会経験がある人が中心となる」と考察する。若年層の消費活動が止まったままでは、将来的に大きな影響が出る可能性があると危機感をあらわにした。