水木しげる「劇画ヒットラー」再注目のなぜ ウクライナ危機が影響?記念館に起きた変化

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   ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、故・水木しげるさんのマンガ「劇画ヒットラー」に興味を抱く人が増えているようだ。

   水木さんの長女で水木プロダクション取締役の原口尚子さんも、ツイッターで、プーチン大統領の権力体制や報道される「ネオナチ」からの連想で、マンガに注目が集まっているのではないか、と推測している。

  • 「劇画ヒットラー」が最も手軽に読めるちくま文庫版
    「劇画ヒットラー」が最も手軽に読めるちくま文庫版
  • 反戦デモではプーチン大統領をヒトラーになぞらえる人々も(写真:AFP/アフロ)
    反戦デモではプーチン大統領をヒトラーになぞらえる人々も(写真:AFP/アフロ)
  • 「劇画ヒットラー」が最も手軽に読めるちくま文庫版
  • 反戦デモではプーチン大統領をヒトラーになぞらえる人々も(写真:AFP/アフロ)

「戦争」「ネオナチ」でヒトラーを連想

   水木さんの故郷・鳥取県境港市にある水木しげる記念館では、2022年2月のロシアのウクライナ侵攻勃発後から、「劇画ヒットラー」のミュージアムショップでの売れ行きが上がってきた。

   「通常は売れ筋の作品ではなく、『のんのんばあとオレ』など他の作品やガイドブックが上位なのですが、ウクライナ危機以降売れ行きが上がり、ベスト10に入るほどになっています」と、5月18日の取材に応じた記念館の職員は話した。「この反響は意外でしたがショップでこの作品を知って、ウクライナ情勢に絡めて興味を持って勉強したくなる人が多いのかもしれません」とも。

   「劇画ヒットラー」は1971年に「週刊漫画サンデー」で連載され、現在は筑摩書房の文庫本や「水木しげる漫画大全集」に収録されている。アドルフ・ヒトラーの青年時代からナチ党内で権力を掌握しドイツにおいて独裁体制を築き、第二次大戦末期の1945年4月にソ連軍が迫るベルリンで自殺するまでを史実と水木さんの解釈を交えて描いている。

   ウクライナ侵攻をめぐり、ロシアのプーチン大統領はウクライナのゼレンスキー政権を「ネオナチ」と呼び、軍事侵攻の目的にウクライナの「非ナチ化」を主張している。そうした点などから、ナチスとヒトラーが連想されるようだ。

ヒトラーを「一人の変わり者」として描いた

   水木プロダクション取締役の尚子さんも22年5月13日にこの現象をツイッターで、「意外にも今、水木しげるの『劇画ヒットラー』が売れてるそうです。連日のウクライナ侵攻のニュースで『独裁者』とか『ネオナチ』などのキーワードに引っかかるらしく...。水木の描くヒットラーは『冷酷で残忍な独裁者』ではありません。時代に飲み込まれた一人の変わり者として描かれてるんです」

   と発信している。原口さんにも父・水木さんが本作で描いたヒトラー像を聞いた。

「多くの人が創作の中でヒットラーを描いていると思いますが、水木は彼を独裁者や残忍な人間ではなく、1人の人間として描いていました。ヒットラーの生涯を調べていくうちに、一個人としては人間的に面白い存在と思っていたようです」

   青年時代にウイーンで芸術家を目指して挫折し、放蕩生活を送っていた時期のヒトラーには水木さんも共感するところがあったのではと原口さんは話す。「ヒットラーは『面白い奴なんだよな』と水木は話していました。水木自身も学校や社会になじめる性格ではなかったので、似ているところもあると感じていたのかもしれません」

   原口さんも本作でヒトラーのことを知り、作中のヒトラー像をすんなり受け入れたという。ヨーロッパで引き起こされた戦火からマンガを通じて、83年前に世界大戦の引き金を引いた独裁者への関心が増しているようだ。

(J-CASTニュース編集部 大宮 高史)

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