「やれる範囲のことを無理せずやってたんじゃ、ひとの心なんて動かせねえんだよ」――乙武洋匡氏「義足で117m歩行」を支えた大物歌手の言葉

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   作家の乙武洋匡氏が2022年5月17日、東京・国立競技場でロボット義足での歩行に挑戦し、自己最長となる117メートルに到達したことについて、noteの無料公開記事で振り返った。

  • 117メートル歩行を達成した乙武洋匡氏(写真:つのだよしお/アフロ)
    117メートル歩行を達成した乙武洋匡氏(写真:つのだよしお/アフロ)
  • 乙武氏のインスタグラム(@ototake_official)より
    乙武氏のインスタグラム(@ototake_official)より
  • 117メートル歩行を達成した乙武洋匡氏(写真:つのだよしお/アフロ)
  • 乙武氏のインスタグラム(@ototake_official)より

「大声援に後押しされると、あっという間に感じられた」

   先天性四肢欠損のため電動車椅子で生活している乙武氏は2018年から、ロボット義足を用いての自力歩行を目指す「OTOTAKE PROJECT」に挑戦している。

   4年間の集大成として迎えた5月16日のチャレンジでは、7分44秒かけ117メートルを歩行。66メートルだった自身の最高記録を大幅に上回る結果となった。

   挑戦を終えた翌17日、乙武氏は「4年間。117メートル。『あきらめない』」と題したnote記事を公開。「ひと晩が経ったけれど、正直、まだ感情が整理しきれていない」と、興奮冷めやらぬ様子で挑戦を振り返った。

「仲間たちと歩んできた最後の舞台。それが国立競技場になるなんて、夢にも思っていなかった」

   乙武氏は雨に濡れたトラックで滑ってしまわないか、寒さにより体が思うように動かないのではないかといった不安があったという乙武氏。これまでの挑戦に思いを馳せるような形で、「いちばんの不安は歩きながら涙が止まらず、視界が遮られてしまうのではないか」ともつづっていた。

   会場に集まった100人を超す応援団のエールに後押しされたとして、「スタジアムに到着したときには、あんなにも遠くに感じられていた100m先のゴールは、大声援に後押しされると、あっという間に感じられた」と回想した。

「無理できる幸せってのがあんだよ」

   当初ゴールとしていた100メートルを歩き切っても、なお歩みを続けた乙武氏。歌手で俳優の泉谷しげるさんとの酒席で聞いた言葉に奮い立たされたという。

「無理しないでくださいね、とか言われるけどよ。無理できる幸せってのがあんだよ。無理が効かねえやつだっていんだから、できるうちにしとかねえと。それによ、やれる範囲のことを無理せずやってたんじゃ、ひとの心なんて動かせねえんだよ」

   乙武氏は今回のnote記事で、泉谷さんの言葉「やれる範囲のことを無理せずやってたんじゃ、ひとの心なんて動かせねえんだよ」を3度繰り返し、そのうえで、次のように伝えた。

「気づいたら、117mを歩いていた」

   乙武氏は、チャレンジの意義について「整理するにはもう少し時間が必要かもしれない」としつつ、4年間のチャレンジを支えてくれたチームのメンバーにも感謝を述べた。

「このチームだったからこそ、ここまで来ることがこれた。このメンバーで4年間を歩んでこれたことは、私の人生における最高の宝物となった」

   乙武氏は17日のインスタグラムでも、義足を装着しトレーナーとともに歩みを進める姿や、電動車椅子に乗り国立競技場の前で笑顔を浮かべた写真などを収めた10枚の写真を添え、チャレンジの成功を報告している。

「【117m達成】国立競技場での100mチャレンジ。当初の目標を大きく超えて、117mを歩くことができました。支えてくれたすべてのみなさんに感謝しています」
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